怒りのこおろぎセンセー


生態系がくずれました。

あらいさんちの、狭い狭い畑に事件が起こりました。


飼い主のマダムこおろぎさんが、怒りと後悔で打震えているので
今日も犬です。


情けをかけて、ひっこぬかなかった楡が大木になり
そこに虫こぶができて大変見苦しい状態になって大騒ぎをしたのが春でした。

さらにこのたび


この春からせっせと手入れをしていた狭い庭に
今年は豊作を予想できるほど育っていたブラックベリー

その可憐な花が
山ほどの実になり


隣の塀をすっかり覆うほどのブッシュになっていたのに


たった一晩で

たった一晩、たった一晩で

葉っぱ全部やられました。


再度書いておきます。
たった一晩で、です。





目を疑う、というのはまさにこのことです。

おかあさん(飼い主・マダムこおろぎセンセー)は
ついに幻覚、幻視かとよろっとしたほどでした。


近づいて

「ぎゃーっ!!!!!!」


ご近所のみなさま
大変ご迷惑をおかけしました。

そばにいた犬もすこし飛び上がりました。


犯人は

こいつらでした。

もっとすごい写真ありますが
卒倒なさる方が続出しそうなのでやめておきます。




おかあさんは農学部で応用昆虫学を専攻。ながーく昆虫の研究をして
今も、虫が嫌いではないというかわったおばさんです。

そのおかあさんが
悲鳴をあげたのです。


なぜなら
たった一晩で食尽すほどの数だったのです。


この茎だけになったブッシュの枝びっしりにこの蛾の幼虫。

あわてたおかあさんが木をゆすったら

ゆだんしていたイモムシさんたちが頭の上から振ってくるという大惨事。

ぎゃーっと再度。


犬の毛にも振って来て

犬もおかあさんにたたかれるという二次災害。


犬も低くうめいたと思います。


ご近所のみなさま
本当に申し訳ありません。


でもお察しください。




思えば数日前、
二匹の芋虫が歩いていました。

おかあさんは


あら、きれいな色じゃないの・・

とフツーのおばさんなら言わない台詞でスルーしちゃったのです。


これこそが間違いでした。


おかあさんは昆虫学で大学院まで進み、
昆虫学博士になろうとした人でした(深い訳あって断念)。


つまり、2匹歩いていたということは
イモムシのママがこの庭に産卵したということで

300や500個の卵のはず。しかも数回に分けて産卵したかもしれない。

つまり1000匹いたっておかしくない。
いや、いるはず!

この2匹をみつけた段階で駆除すべきだったのです。


とはいえ、
食べる実ですから殺虫剤もつかえなかったのですが
物理的に駆除できたかも・・・。


後悔に継ぐ後悔。

おかあさんは
ブラックベリーの残された実に
ごめんねごめんねと繰りかえしていました。


こんなに大きな実になっているのに
もう葉はないのでクロロフィルなし。
つまり光合成ができない。

養分は無理。


あー、私がわるい!


とおかあさんの落ち込みのひどいこと。


りーちゃん!



あ、きましたきました・・・


りーちゃん、これを生態系といいます!

どこかが増えるとどこかが減る。

けれどこうして葉を喰いつくした段階で
すでに彼らには餌はない。

かれらの多くは、食性にクセがありますから、たぶん他の葉は喰わない。

もう餌、ないもんねーっ
蛹になれるもんならなりなさいよ、このアホイモムシ!


・・・


おかあさんは雨があがった翌朝、ものすごい顔をして
30度になった札幌だったのにダウンジャケットで全身防備して
大きなゴミ袋をいれたバケツ片手に
ゴーストバスターズ!!

枝にしがみついている何百匹の幼虫を捕獲。

いやあ、悲鳴をこらえての大作業でした。


犬はその様子が怖くて
家のなかから見ていましたが

黄色い長靴(これ、スエーデン製の極上ながぐつ)が気の毒になるようなファッションのおかあさん。

全身ダウンで覆って、ド派手な帽子かぶって軍手にでっかいスコップとクワ。

これで頭に懐中電灯かろうそくつけていたら
八墓村です。


ああ、これ以上書けません。


いまさらどうにもならないのですが

わずかに残った新芽がやられては木が全滅しますからね。


イモムシは万一そのへんで蛹になったとしても
飛翔していけば来年が来ないはず。

その辺は冷静なおかあさんでしたが


ふーっ。


おかあさんの汗と怒りはすごいもので

犬はうまれてはじめて
人間の強さをしりました。


「イモムシに情けをかけてはだめ」


「2匹いたら1000匹いるとおもいなさい」


奇妙な教訓をぶつぶつと言い続けていました。



そんなこんなで
多忙な日々がもっと複雑になっているおかあさんですが


大学の作業も多忙をきわめ
すっかり元気も勇気もなくしていた午後

講義を終えてぐったりしていたら



非常勤講師のお仲間で、コピーライターとしてご活躍している
Mさんが貸してくださった文庫本。


彼女は
30年前、お仕事でごいっしょしたコピーライターさんです。
ずっとご活躍。
国語学部の学生さんたちに日本語や広告などを教えていらっしゃるようです。

数年前、大学で再会。


元気のないときにはこんな本を!

「いい女」は「いい本」を貸してくれるものです。





なるほど!


笑顔復活。


そして同じ部屋で
さらに楽しい展開。


中国語の先生とお料理のお話でもりあがり
ちょっと楽しい企画勃発。


でもできるかなあ・・・・


中国の食材でおいしい何か・・・


「牛蛙は料理できますか?」


ウシガエル

椅子から落ちそうになったおかあさんでした。

鯉も鮒も手にはいらないし
牛蛙は絶対無理。


みなさん


おかあさんが少し大変です。

イモムシバスターズのあとは

「牛蛙」とか
カエル料理を始めるのでしょうか・・・・


やだなあ・・・家のなかにカエルがたくさん来るのなら
犬はいやです。
たぶんおねえさんたちは一歩も家に入らないはずです。



生命科学
食生活論を同時に研究すると
こんなふうになるのよ、と
おかあさんは
なぜかなにかを発見したようなすがすがしい顔をしています。


ものすごく落ち込んだり
悲しそうだったりして
心配していましたが


犬が思うよりずっとたくましい飼い主のようです。


今日は少しもきれいな写真を載せられなかったのでごめんなさい。
犬ができることといえば、

ボール咥え、2連発。

おはずかしい限りです。