大切な本

本を読むのが遅い私が
繰り返し繰り返し
本当に繰り返し読んだのが
栄久庵憲司さんの
「幕の内弁当の美学」


海苔弁当と
キャラ弁
それらに真っ向立ち向かって、
真面目に論文を書いていた時期、
バイブルのような一冊でした。


インダストリアルデザイナーと
言ってしまえば簡単ですが

キッコーマンのお醤油の瓶をデザインした方です。

あれもこれも
先生の
美しく、機能的なデザインは
どれほど日本に残っているでしょうか。


そして
「デザイン」を理論で語り尽くしてくださった
大先生でありました。




農学部と理学部で学んだだけであれば
生涯出会わない
生涯感動しなかった世界だったかもしれませんが


40代で
生活美学に道を変えた私にとって
栄久庵憲司先生は
神様のような存在でした。

不幸にして
直接お会いしたことはありませんでしたが
どの文章もどの作品も
目にするだけで背筋が伸びる思いでした。



たかが「お醤油の瓶」だったり
たかが「お弁当」であっても
そこにデザイン、いや
芸術の全てを読み解くことができます。


今私が、飽きず取り組んでいる調査も
根底は栄久庵先生が提唱なさっていた美学や
道具学の末端に感動してのことなのです。


その先生が亡くなりました。

たくましく動いた昭和、そして
かろうじてその原動力を継承した平成の
よき前半が終ったことを認めざるを得ないさみしさを感じています。



ユネスコ
定義も今ひとつ不明確な「和食」を
世界遺産に登録したことで
なんとなく
「和」が浮ついているのが気がかりです。


ちゃんと考えませんか?


「なんとなく」


というのでよいことと
よくないことがあります。





「本書は、幕の内弁当の美にうたれて発した造形論、デザイン論であり、
そのつくられかたの妙にうたれた組織論・産業論であり、
また、現代産物を我々の伝承してきた「もののつくりかた」によって斬ってみる、
という意味での伝統論であり、幕の内構造に日本文明の生きかたの原理をみる
という点では未来論であることを願った。」P15


昭和54年の筆。


この先生の思想と言葉を越える語り部はいないと思います。





一言では語れません。
ご興味のある方、ぜひじっくりお読みください。


「グルメ」系、「盛り付け」系、「食卓装飾」系の捉え方は
確実に変ります。

深い深い内容、読み応えがあります。


バブルがはじけてこんなに年月がたったのに
不思議と「食卓」や「食環境」はうわついたままの日本。

だれもが発信者になって久しいことも
その背景にあるでしょう。



哲学のある識者であり、
力のある真のデザイナーの現役の声に耳を傾けると
必ず「食」の場面が立体的に見えてきます。


昨秋出版になった拙編著の「食学入門」も
この時代の食へのイライラが原動力であったことは事実です。


栄久庵憲司さんの名著、「幕の内弁当の美学」
副題は日本的発想の原点


おすすめの一冊です。

私が持っている文庫本の中で
一番ボロボロの一冊です。




さて犬です。

おかあさんが
とても深刻な顔をして
びりびりに破けた表紙の文庫本を読んで
ため息をついています。


犬も緊張してお行儀よくしていたのですが
ついウトウトしてしまいました。



気分とりなおして
おかあさあんの近況。


おかあさんは
ヨーコちゃんが京都から持ってきてくれた白みそで
ヨーコちゃんが作ってくれたお雑煮に感動して

なにやら料理熱の炎がデッカくなったようです。

お鍋がいくつも並んでフル活動していたり、



ついに、「郵送可能」な、クッキー風のキッシュ完成。
いいぞいいぞと独り言いってました。



驚くほど気軽に作れるおいしいシューマイ開拓したりしてますが



こんなアーティフィシャルな・・・と言えば聞こえがいいですが
許されないようなクレープの失敗作や


世界で一番まずい、パンケーキのようななにかの焼き物つくっちゃったり
同居人、あ、同居犬はつらいです。


「りーちゃん!いいもの、あげる!」

とおかあさんが言うとき、

ホントーに
「いいもの」であったことは一度もないのに

犬はうっかりシッポを振って
走っていってしまうのが情けないです。


この「工夫しすぎた」パンケーキのような焼き物は
なんでも食べる犬でも食べませんでした。
一口食べて、
「これはだめだ」と思いました。

「あ、いらない?
あーそーっ。りーちゃんには今後二度と再び、何ひとつあげませんからっ!」


おかあさんは激怒しましたが


「やっぱりなあ・・・・」と
小さい声が聞こえたので
おかあさんもたべられなかったはずです。

なに、いれたんだろう・・・。



まだ、黒砂糖が焦げた穴あきクレープのほうが
まだ、飲み込むことはできました。



すっごくおいしいものができると
(先日、ついに、いつかどこかで食べた、ホロホロの鳥の唐揚げを
再現できたようです・・・)
大喜びして真夜中でも

「やっぱり天才だわ!
犬、起きろーっ」と呼ばれます。


でも
世界一まずいものもつくっちゃうわけで
そうぞうしい生活が続いています。





大学の採点と評価で大忙しのおかあさんですが
こうして犬の寝姿を激写するタイミングはのがさないので
まだ余裕があるようです。


今日は
栄久庵憲司先生の訃報で
ちょっと元気のないブログになり、
なんの情報もないのは申し訳ないので
おかあさんが気に入ったワインを載っけておきます。



このキャップとラベルの色のなんと素敵なことでしょう。
もちろんおかあさんはその色、で選びました。
セブンイレブンのワインで500mlで665円。

どこそこのなんとかワインじゃなくても
こんなワインでちょっとお肉やお魚蒸したり、
冷やして、バッカスチョコ齧りながら飲んだり、
充分おいしいです。


飲み切りサイズの500ml。
食卓にこの色、新鮮で、おすすめだそうです。


犬でした。