蘭の花とりきまるの受難+おかあさんの弱体化

三泊四日とはいえ、一泊目は真夜中に到着して寝るだけ。
四日目は早朝5時にホテルを出るというツアーは
正味二日間の旅。


その二日間で
シンガポールの主要ポイントをほとんどを網羅できたのは
おかあさんのお友達がご案内してくださったからこそ。


シンガポールでビジネスを大成功し、
他方、音楽家として大学教授の仕事も全うし、
今も演奏活動(尺八の大師範)を精力的に続けている
UENOくんが、連日おかあさんところすけ姐さんにつきあってくださったとのこと。



車で連れてあるいていただけなければ
二日間でこれだけまわれませんよね!



植物園も今回は諦めていたのですが

花の仕事をしているのだからと
一部見せていただいたのが
これらの写真。







自然に生えている蘭たちは
美しいだけでなく
強さを称えていて
ため息がでます。




おかあさんが
大好きな白いデンファレデンドロビウムファレノプシス・・・だと思う)

こんな風に暑い日射しをあびて
凛として咲いていました。



ふだんはお花にあまり関心のないころすけ姐さんも
その美しさにうっとり。



それにしても
ころすけさん、「現地」の風にぴったりのお姿。





欲張りツアーのため、長い時間は滞在できませんでしたが
充分充分、蘭と木々、草花の力に感動できたようです。





こんな葉っぱの蘭もあり・・・



そして
これも
おああさんがよく使う
黄色いシンビジュームが
アーチを作っていて


それはそれは
おかあさんが大興奮したのは当然です。


「ああ幸せだわ!」と
何度も叫んだその声が聞こえてきそうです。








さて
水曜日の夜、おかあさんは突然喉の不調を訴えました。
喉の病気ではなく
喘息+アレルギー、そんな感じでしょうか。
そして軽い風邪気味。


おかあさんにとっては大事件です。
しゃべる以外に、おかあさんが世の中の役に立つことはないからです。


漢方薬やら風邪薬やら飲んでも簡単には快方に向かわず
迎えた翌朝、3時半、お仕事で飛び起きたものの
相変わらず、ひどい声。
さてどうする、マダムこおろぎ、6時25分からのイチオシモーニングで
声は出るか、咳こみはしないか!



でもそこは強運こおろぎセンセー
本番では、ひどい声ながらなんとかコメントはできたようです。
(ま、ふだんから、いい声ではないのですが・・・)



つくづく強運だと思います。

さて
その番組を
札幌のホテルでご覧になったのは東京の出版社光生館の編集者さんIさん。
午後、本の最終打ち合わせと次回のご相談などでお越しになったのですが


「アライセンセー、あんなに笑顔の時もあるんですね!」

と!



ひゃっひゃっひゃっ!
犬は、できるものなら爆笑したかったです!
やっぱりおかあさんは、お仕事のときは
みんなが怯えるほど怖いんですね!
画面の中の笑顔と
日常のこわーいお顔のギャップ、
これ、やっぱりデッカイんですわ!

(おかあさんは録画を見る時間がないので、自分の画面の笑顔をしらず、
自分はいつでもどんなときも同じ顔だと言いますが・・・)


まあ、とにかく
おかあさんが怖いのはボク(と、おとうさん)だけではないことがわかり
ひゃっひゃっひゃっと嬉しくなったのでした。






ただ
ボクはいい気になりすぎました。
いつもはおかあさんがお仕事のときは
2階のカゴの中にいるのですが
今回は本の装丁やデザインをした、大好きなエリーさんもいらしていたので
そして
おかあさんがちょっと弱っていたので
カゴにはいらず、うろうろ同席させてもらっていました。



そして時々
調子にのって、おいしそうなバームクーヘンが欲しい、
なんてことも吠えてみたりして


犬っぽいことしては
弱っているとはいえ、
やっぱり怖いおかあさんに、ひどい声で叱られていたのですが


きわめつけは、みなさんが出かけるときに
カゴに入れられるとき、無駄な抵抗をしたことでした。



いつも通りの無駄な抵抗だったのですが
おかあさんはいつもより強かったのです。


ハーネスをつけたままのボクを
階段の上からひっぱり
ボクはボクで
いい気になって抵抗したため、
なにかが起こって、滑る床も原因となり
ボクは後ろ脚を二本とも痛めたのでした。



一瞬立てなくなり
歩けなくなりました。



そのときのおかあさんは
今までみたことのない
おかあさんらしい顔でした。


「りきちゃん!」


なんて叫んで、両足をなでてもらいました。


なかなか立てなかったのですが
冷静なエリーさんと編集者さんと
強いおかあさんの判断で
しばし様子を見る事に。


その間、おかあさんはやさしく
(最近、毛を刈ったので
後ろ脚がむき出しになっているので、
生物学的に皮膚の上から筋肉や骨を
一種の職業意識で、探っているような気がしましたが・・・)
撫でてくれているうちに
ヨロヨロとなんとか立てたのでした。


「折れてない!」

というエリーさんのひとことで
ボクは甚だ不本意ながら
おかあさんに抱えられてカゴに入れられたのでした。



もしこのとき、おとうさんがいたら
おとうさんは、小さい象よりきっと重いくらい大きいのに
おかあさんの何千倍も心配性で
狼狽が得意(・・・・)なので
ボクは車に乗せられて即、病院に連れていかれたと思います。



ああよかった、居合わせたのが
おかあさんよりずっと冷静でたのもしいエリーさんで!





それにしても
写真を見れば見るほど、脚って細いですね・・・・

犬ネコにかぎらず、四つ足動物たちの脚は
驚くほど細い。
それが折れないのは本当に不思議です。


その夜、帰ってきたおかあさんは
ついに声が、蚊の鳴くような、というか
ギシギシっという声になっていて
本当に終盤を迎えたお仕事と
次のお仕事で、本当は猛烈に元気なはずなのに

ボクをカゴから出して


「りきちゃん、ごめんね・・」




ぎょっ。


よわってる!


おかあさんが弱ってる!



「こんなフローリングの床だから、すべるんだわね・・」



よ、弱ってる弱ってる!



「強くひっぱったから、いつもと違う所を打ったのかもしれない・・・」



ひどく弱ってる!
反省ということとは無縁のおかあさんが
ボクの怪我くらいで反省してる!
これは一大事です。



「りきちゃんも、もう6歳だからなあ・・・トシってことよ・・」



え?
それはこっちが言いたい台詞です。
「もうトシ、なのはボクではなく、おかあさんです!」
と言いたいけど言えず、ボクは白目がちの目でじっとおかあさんをみました。


実はボクは4つ子(四匹いっしょに生まれました)ですが
ボクだけ売れ残っていました。
その理由はいくつかあるのでしょうけれど
この家のひとたちは、ボクの目つきがあまりよろしくないからではないかと考えているようです。
ちょっと白目の加減が「情けない」のです。

黒目がち、ってのは素敵ですが
白目がち、ってのは貧相です。


ボクにはそんなつもりはないのですが
ときどき、

「そんな目でみないでよ」

とおかあさんは言います。


きっと何かをひどく訴えているまなざしに見えるのでしょう。


でもボクには
何かを強く訴えるような、それほどの意志は常にありません。


が、

今回は


「痛い?
りきちゃん、痛い?」と


おかあさんはボクの白目がちの目をみながら何度もかすれた声で聞きました。






ボクはもう片足を高くあげておしっこできるほど
驚異的な回復を見せました。


が、

問題はおかあさんです。



声がでません。


みなさん、

今、マダムこおろぎは弱っています。


日頃の不満をぶつけるのは今です!


今ならすぐに反省します。



全世界のみなさん

こおろぎをつぶすのは今です!



ただし、

ボクが驚異的に回復したように

こおろぎセンセーの免疫力と回復力も
驚異的なものがあります。

明日もどこかに遠出するという噂です。


声の出ないおかあさんなど
何の役にも立たないはずですが


きっとまた
「その場」に行くと
「こんにちは!」と元気な声が出て
満面の笑顔になれちゃうのかもしれません。


ですので、
みなさん、
こおろぎをつぶすチャンスは短いです!

お急ぎください!