情熱

もう何年も
私はある書家に入門したいと懇願し続けてきました。

断られていた・・・わけではないでしょうけれど

そのうちに・・・
機会があれば・・・


そんな風に時間が流れたのです。


そしてついに

羽毛蒼洲先生の講座を開設できることになりました。



悪筆で名高い私一人が教えを乞うなど
畏れ多いこと。

学問としての書、
学問として文字を学ぶことに
情熱のある門下生を
募集します。


羽毛先生の講義をお聞きしたく
実技指導をいただきたいという

長い長い希望が叶いました。


武藤省吾さんの写真集
(武藤省吾写真集「花衣秋桜」平成17年)に
俵万智さんの歌を書かれた羽毛先生の文字は
写真家がとらえた花の儚さと
名を残した歌人の、躍動する言葉に
ふさわしすぎて
目眩がするほど美しい。



北海道文教大学札幌国際大学の非常勤講師室で
いつもごいっしょしてきた羽毛先生は
どんなときも笑顔で
いつだって凛とした姿勢
著名な書家であることを知ってからは
作品を拝見するたびに
感動してきました。


単にお習字、書道を学ぶのではなく
大学での講義と同じ
「日本文化演習」として


「文字を書くことは、自分そのものを表現すると言われています。
書道は中国に生まれ、主として東洋の漢字文化圏で発達してきた
独特の芸術である。その歴史に触れながら
文字の発達にともなう書体の変遷をしっかり踏まえながら
さまざまな書表現の体験を通し、自らを発見し、
自らの創造性を高め、国際人として生きる喜びを知る・・」


羽毛先生が大学のシラバスに記されている講義の目的と概要。


書道の基本に始まり
まずは
楷書表現
行書表現
隷書表現
を根本から学ぼうと思います。




1942年生まれ
1979年第20回北海道書道展大賞を受賞されてから
今日まで、その歩みに揺れはなく
多くのファンを魅了してきました。


詳細は後日
ページのお知らせで。
今回は10回(短気集中)コースで
入門編。

12月からスタート予定。
座学でのしっかりとしたお勉強
学問としての文字、書にご興味のある方、
ホームページのお問い合わせ欄にご一報ください。

お席に限りがありますが
生活文化塾の北大前アトリエでの開催です。



バリトンの歌声に魅せられ
これからはオペラの世界の深みにどんどんはまってゆく
予感のマダムこおろぎですが


残念ながら自ら歌うことはできません。

でも書を学ぶことはできそうです。

数年かけて説得した羽毛先生のご講義開講。
ワクワクしています。




どんな世界にも
縦のつながり、横のつながりがあり
何かを極めようと思う時
予期せぬ足かせで動けなくなることがあります。


歩みを妨げられることもあります。


私自身、花と料理の世界、学問の世界で
経験してきたしがらみから
どう逃れるかが、常に大きな課題でした。


結果として
一匹オオカミ・・・
いや
一匹こおろぎ!
という決意で
やっと少し、自由になれた気がします。


羽毛先生の書家としての歩みもまた
何にもしばられない強さと豊かさ
そして長年の教育者としてのご経験

そのどれもが
魅力です。


1991年発行の
「北海道の書・20人の世界」
(’91北海道の「書」/20人の世界実行委員会編集・発行 p64)

佐藤庫之介は羽毛先生について書いています。



「<火宅>」で第20回北海道書道展記念大賞を受け、30代半ばで
世に出た。記念展にふさわしい攻めの「書」、「若さゆえにできたしごとだ」というのが
大方の評価であった。
羽毛は’65年に大学を終えて北樹会に投じた。そこは、遅れてやってきた若者にとって
目眩く光景に映った。連年、発表を続けていたし、北樹会がもっとも識んな時期に
いたのだったから。<火宅>は、そうした歩程で始まった最初の成果だったのである。
 若くなくなったときどう変るか。褒辞が問を含んでいるのに羽毛はもちろん気づいていた。
自分の中にある種の純粋培養のひ弱さを見届けている眼に、
不可視の空間に踏み込んでしまっている無重力感とでもいったものの快さまでが届くのは
矛盾であったろう・・・・」





難しい文章です。

けれど

若い日の羽毛先生の葛藤と情熱がうかがえる評論です。


この文章を読んで
佐藤庫之介という人の筆力い感動しつつ
どこにも属さず、
ホンモノだけを見据え
大学という場での指導にも力を惜しまないこの人を
師とする講座を企画することに
昨今心細いことが続く私ですが、
このことに限ってはゆるがない自信を持ったのでした。




木のはなと
草のはなは
字がちがいますからね・・


先生は微笑みました。

墨の奥に
世界が見えてきそうです。



道教室ではありません。
お習字教室でもありません。

羽毛蒼洲先生の講義の開講です。





さてさて
ワクワク気分はこのへんで、
近況を・・・・



日帰り手術という
画期的な施しを得たのがすでに4日前。
しかしながら歩行に少々苦労があり、
痛みも残っているため
休養モードの週末です。

犬にもお里帰りしてもらって
静かな時間
机に向かっての仕事は問題がないので
とうとう教科書執筆を開始。


1月末まで
緊張の日々が続きそうです。


座ってばかりいても仕方がないので
衣服の整理も同時進行。
自分自身の洋服の好みを再確認。
揺れないなあ・・・と思いつつ
フリルとリボンは明確に似合わなくなったこと
ミニスカートもそろそろ限界だということ
ジャケットスーツは本当に似合わなくなったということ
そんなことを強く自覚。


そして被服学で博士号をとったんだと
苦笑しながら
「食」と同じくらい「衣」に興味があるのは
本来が生物者だからだろうと、これも自覚。


そんなことを考えながら日曜美術館
清川あさみさんを見て
そのファッションにため息。

個性的なアーティストですが
この日着ていたワンピースの
なんとオーソドックスで
上質、クラシックでありながら新しい。
左肩先に大きなブローチ。

若い女性の堂々としたブローチづかい、めったに成功例を見ないので
多いに感嘆。

ブローチ、これ、大人のキーアイテムだと
私は密かに思っています。


イギリスも日本も
皇室の女性達の必須アイテムである理由はなんでしょうか。

左右を非対称にする
つまり、フォーマル感を一瞬揺るがすアイテムであるからこそ
大人のそれは
おもちゃであってはなりません。

ネックレスとは違う
大きな機能がブローチにはあります。
使いこなせる大人になりたいものです。




時代は刻々と進み
新しい力は次々に育ちます。


その新しい歩みに期待しつつ
年齢を重ねた人間だからこそ気付く学びというのもあるはずです。


オペラとクラシックバレエに加えて
書の世界に眼が向いたマダムこおろぎ、
ささやかな文化活動で
加齢を楽しもうと思います。



い、い、痛いっ・・・
まだ痛いっす!