六月の終りに

なんでも準備。
東京なでしこ倶楽部初回の準備風景。

こおろぎが大好きなモノが並んでいます。

トコトン手抜きのメニューですが
なにがご不満でも?

意地と根性とは無縁の人生を歩いてきましたが
忘れられない言葉があります。

大きな展覧会でのことです。

「あれだけバラを使えば、だれだってひと目は惹ける」

水盤に色々な色のバラをたっぷり活けた若いこおろぎの
背中に突き刺さった言葉でした。

親子ほども年の違う大先輩が
「だれでもできる」と、
親子ほども若い後輩に、聞えるように言う理由がわからず

若いこおろぎは、この世界には長くはいないだろうと
思って震えたのでした。


同じようなことがその前後、続きました。

「彼女の花はキレイなだけだ」

「お嬢さんのお遊びだから、お金かければなんでもできる」

・・・

キレイなだけで充分ではないのだろうか
お遊びに見えて、どこがわるいのだろうか


若いこおろぎは、憧れた世界に
どんどん距離を感じるようになっていったのでした。


「主役はその場に集う人」

花はけして主役になってはいけない。
活け手の主張が見えすぎてもいけない。


話がそれました。

手抜きでも
集う人が、楽しく食事ができればいい。

手をかけて作った一品が
5分で食べ終わったら、その後どうしたらいいのでしょうか。

食事は所詮食事。

抜ける手は抜いて
時間と空間も味わってこその
集いだと
思っています。


東京家政学院大の講義の前夜はホテル住まいのこおろぎ、
場所は町田。
町田教室を主催してくださるHさんが
古流の竹の器をかかえてお越しくださり、
ホテルの部屋の床にピクニック用のビニールを敷いて
研究会。
Hさんのお庭の緑が
古流の格調高い伝統の器に
新しい息吹を与えてくれたようでした。


北海道文教大学の講師仲間と
今日はいっしょに帰りました。
化学を学んだのに、今は日本語教師としてあちこちの大学で
大活躍のO先生、
文化人類学で博士号を取られた中国人のU先生、
ディケンズのご研究で最近博士号を取られたS先生、
そして胡散臭いこおろぎの4人で
大学近くの道の駅で、激安野菜の大人買い
そして背後に広がるハーブ園と広い芝生をしばし散策。


それぞれの学問に真摯に取り組んできた者同士の
信頼感があって
年齢も出身もいろいろな4人が
それぞれの授業を終えて
初夏の夕方をのんびり歩く・・・

こんな幸せな時間が
こおろぎに巡ってきました。


思ってもみなかった安らぎでした。


そしてそのこおろぎ、
本日は3コースで中間試験をしてみましたが
持ち込みを許したノートに
まさかの似顔絵。

いろんな学生がこおろぎの顔やら姿やらを
描いていることは知ってましたが、
本日見つけたこの絵、なかなかいいです。


笑ったり、ほっとしたり
忙しい1日でしたが、
夕方行ったコンビニで
先輩格のバイトさんが
新人のバイトさんをひどくきつく叱っている場面に遭遇。
この先輩格のバイトさんは
こおろぎが「ごひいき」にしているA君です。

普段は優しくてよく動く彼ですが
混み合っている店内に響き渡る大きな声で
真っ赤な顔でうつむいている新人君に長々、お説教。


ちょっと違うね、A君・・・
こおろぎはとても哀しくなりました。


そして買い物を終えてレジにならんだこおろぎは
から揚げとコロッケも買うことにしました。

ああ、ここにも別の新人君。
コロッケ掴むのにも袋にいれるのにも
なにもかも時間がかかる。
頼まないのにレンジに入れる。
あわてればミスが続く・・・。
こおろぎの後ろのオッサンは
「早くしろ」といわんばかりのため息と貧乏ゆすり。
手際のわるさは天下一品の新人君に
こおろぎはとうとう
「ちょっと急ぐのでお会計してくださる?」と一言。
たくさん買ったので、彼は袋に入れるのも一苦労。
袋詰めはこおろぎがやるからお会計を!という思いでした。



おつりを渡してくれるとき
この新人君、こおろぎに深々と頭をさげて


「要領が悪くて申しわけありませんでした。
手際わるくて、すみませんでした。」


50円玉をこおろぎに渡すその手が
とても冷たくて
こおろぎは涙がでそうになりました。
彼もまた、きっと先輩A君に
何度も何度も叱られたのだと思います。


若い日の、のろまでグズなこおろぎを思い出しました。


お花の世界では、
大先生に頭の上をまたがれたことがあります。
大先輩には、誰にもわからないように雑巾を
投げつけられたこともあります。



がんばれ、新人君たち・・・


コンビニという
「新世界」で、きっとたくさん学ぶにちがいありません。

わが家のキキだって
居酒屋稼業が、こんなに研修医生活で役立つとは思わなかったとのこと。


「ありがとうございます」
「申しわけありません」


このふたことが 
しっかりいえたら、それで上出来です。


今年も6月が終わります。

ホームページ、新装開店が目の前です。

こんな年齢になったのに
若い仲間と
長いお付き合いの皆様に支えられて
こおろぎは幸せです。


ありがとうございます。

本当に
ありがとうございます。