ときめく男たち

こおろぎは足早やの旅にでていました。

そのバタバタで準備していた早朝
教育テレビに辺見庸さん。

重い口調で重い内容。

かつてこおろぎは
辺見庸さんのお書きになる文章も
話す口調も大の苦手でした。


でも

近年、「もの食う人々」を熟読して
彼の思考の鋭さと純粋さに完敗。
だれも書けないことを書いています。

時まさに、こおろぎ自身が
食べることの、犯罪性、残忍性などを
考え始めたときでもあり、

純粋に読めたのです。


その彼が
今回の震災の重い内容を重く語っているのですが
当方、大忙しなのでじっくり聞けなかったものの


陰々滅滅の
苦渋の口調と内容ですが
彼は正しい。
彼の哲学、彼のモノ書きとしての
哲学が溢れて
忙しい朝なのに
何度もテレビの前で足をとめ
メモをとりました。


内容は忘れたのですが
彼は正しかった。


孤高のエッセイストを見た思いでした。



そして
バタバタと早朝家を出て
神戸に飛んだこおろぎでした。

その機内で
どっさり仕事を片付けつつ
ふと画面を見ると
あら、
素敵な男性・・・。
エアロコンセプトのすがのけいいちさん。

板金工としての仕事の後、
金属にカラフルな上質の皮を手縫いで張り合わせるという
奇想天外な発想でバッグなどを作る作家。
そして現役の板金屋さん。

彼が生み出すバッグやケースの完成度は高い。

ロンドンのギーブスアンドフォークスでも扱ってます。


その彼が、大借金で死のうと思った日を語りつつ
作りたいものを作ろうと思い立ち、
実行に移した後の色々が全日空のビデオで流れて

こおろぎは手元の作業を中断して見入ってしまいました。

出来上がるバッグは、板金に皮ですから
使いずらいし重い。

それを彼は
「そうとう不便だよね・・・」と笑い、
「でもさ、さあでかけるぞ、というとき
このくらい不便なのがいい」



これはこおろぎと全く同感。


非常勤講師としてでかけるときでさえ
こおろぎはハイヒール持参。
札幌以外のときはジャケットも2枚用意。
でかけた先の様子がわからないと
不安。


だから荷物は多いし、重い。
不自由なうごき。


でもだから、普段ではない仕事のモードになれる。




省く無駄は、緊張感をうしなわせる。


重みや、不自由さや
辛さが、気力を生むのです。

こおろぎはそう思う。



大借金のあとで
死ぬまでに自分のものを作ってみよう、
自分の欲しかったものを作ってみようと
思ったといいいます。


こおろぎもそうします。


そして
今回みつけた素敵な男性の3人目は

旅先のホテルのテレビで観た
建築家「隈研吾」氏。


奇をてらった、バブル期の打ちっぱなしの個性派的な建築を
つくり続けた結果、多くの批判にも晒されたとのこと。

実に、当時は
「そんな家」や建物が多かった。
何を隠そう、こおろぎも
「そんな家」に住んでいました。


こおろぎが1985年に、山の中腹に建てた家は
裸ブロックと打ちっぱなしのコンクリート、それにベニア板を
組み合わせ、外装は黒のトタン張り。窓は木枠でアボカドグリーン。
どう見てもレストラン。
有名な建築家の作品で、
いろいろな雑誌にも掲載されたし、
テレビや雑誌の撮影にも使っていただきました。
でも
正直なところ、住みやすい家ではなかったかも・・・

渡り廊下も二つの中庭も
それはそれは素敵な
とても楽しい家でしたけれどね・・・・
住み心地は別でした。

建築は難しいです。


そして隈さんがたどりついたのは
少年時代の原点、育った家の素朴さ、あたたかさ。


作品ががらりと変わった。


ああ、
やっぱりそうなんだと

こおろぎは思った。


一度はみんな
大きく立ち止まり
苦しむ。

でも

転んだあと

それまでと全く違う方向から
「自分の仕事」を見つけ出すのでしょう。


ころぎは
ずっと転んだままで
困ったものですが・・・





辺見庸さんも
エアロコンセプトのすがのけんいちさんも
隈研吾さんも


同じ匂いの男性です。




こおろぎ、久しぶりに「いい男たち」の存在に
触れて



背中が伸びました。




満開の葉桜は
こおろぎの学び舎のひとつ、武庫川女子大です。

八重桜がキレイでした。


そして本日は東京家政学院大学でフードプロデュース論演習。

少ない人数でしたが
だからこそ、学生さんの声も聞けて
幸せな2コマでした。



学ぶことこそすべてです。
学ぶことがすべてです。
心から思います。



今回の旅で
こおろぎは恩師の一人のY先生の
明晰な思考回路に触れ、目から鱗がぽろぽろおちました。
とうてい到達できない師匠を持つことは
実に幸せなことです。



どんなに歩いても追いつけない、それが弟子。
小走りにどこまでもついていきます・・・
それが学ぶということです。


なんとか関西に通う機会を増やして
学び続けたいと思います。


さ、
またお弁当作り開始です。


こおろぎ組のみなさまの素敵な1週間を
心から祈っています。


こおろぎ「勝手に素敵な男さがし」
これ、シリーズ化したなあ・・・・

自らを素敵な男だと思う勇者がいらっしゃったら
自己推薦を。
審査は相当きびしいですよ・・・
一度ならずも二度三度の大失敗を乗り越えていないといけません。
大批判にも晒され、それをものともせず・・・
そして
誰かのためにならなくてもいい
誰のためにもならなくていい
自分のために仕事をしていることが
第一条件だと、「勝手にいい男探し実行委員会会長」は
思っています。