感動


久しくあっていないキキから電話がありました。
声を聞いた途端に涙が溢れました。
明日から3日間、国家試験です。

医師国家試験は、フツーはみんな合格するのかと
思っていました。
でも朝9時から夕方5時まで
しかも3日間。
その量の多さと深さに驚愕。
この半年、模擬試験に次ぐ試験。

アルバイト三昧で勉強不足だった彼女は
そうとう大変な思いをしたはずです。

ここ2ヶ月は大学と一人暮らしのマンション
半々で、寝る時間も割いての猛勉強でした。
たまに帰宅しても
寸暇を惜しんで勉強。


それはもう
大学受験の比ではありませんでした。

なにか作って届けようかと
何度も思いましたが


電話もメールもわずらわしいに違いなく
親より友達、
家族より仲間、
それが本当でしょう。



そのキキから電話。

こおろぎは
心から彼女にお礼を言ったのでした。

生まれてきてくれて
今まで子どもでいてくれて
本当にありがとうね
よくがんばってここまで到達したねと

本当にそう思うのです。



キーちゃんは
すべての親孝行をしてくれたからねと

感謝するばかりでした。


いろんなことを我慢させてきました。


親としては最低のこおろぎに
よく耐えてくれました。


25歳の春、もし合格して医者になれたなら
そのとき、こおろぎの子育ては終わります。


手抜きばかりの
いい加減な子育てでした。

社会人になるまで
ひとりで生きていけるまで


そればかりを祈ってきました。

彼女は
いつだって大勢の仲間に囲まれ
いつだって働きものでした。

だれかの役にたってくれれば


そしてキキ自身が
達成感を得られる人生を送れるのなら
それが何よりです。


キーちゃん、よくがんばったねと
言っては涙
25年を振り返ってはまた涙。



親など無力です。

自分がいなければ子供はどうなるのかと
思った日もありますが
それは本当に短い間でした。


自我が芽生え、
周囲を見回すようになったときから、

親など無力なのです。


子どもの人生は子どものものです。


親にはきっと
引退時があるはず。

漠然とそう思ってきました。


キキが一人暮らしをしたいと言ったとき
その時が来たと思いました。


町内に大学があるのに、
自宅から通えるのに


でも
いつかひとりで生きていくのなら
本人が望む時期がその時期なのでしょう。


奨学金とアルバイトだけで
4年間すごしたのでした。
立派でした。
世界中を歩き、
学会の若手グループでも活躍し、
ヘトヘトになりながら
よくがんばりとおしました。


彼女に学んだことの多さにおどろいています。

こおろぎは実に沢山のことを
キキに学びました。

親として、ではなく

子としてでもなく


人として
こおろぎはキキに沢山学びました。


古い写真を改めて眺めています。
不細工シスターズが、まだミニサイズだったころです。

なんと低いお鼻、
なんと平らなお顔だこと!


2歳と9歳でしょうか。

こおろぎのお友達の結婚式。
ブーケ作りの間、ずっと二人は待っていてくれました。

二人のドレスはカブトムシのママが縫いました。
二人のブーケとヘッドはこおろぎが作りました。
二人でフラワーガールをつとめてくれたのでした。


このキキが国家試験
そしてコロ介はあと10日で大学前期試験です。
二人に来るべき春が来たのです。



がんばれシスターズ。


女は度胸です。

愛嬌は充分満点。
美貌は無縁でしたが
愛嬌は絶対に満点です。


ひとりで生きていけるようになったら
お母さんになってみるのもいいでしょう。

しっかりひとりで生きていけるようになったら
誰かと暮らしてみるのもいいでしょう。


イキモノとして
地に足つけて元気よく走ってください。


こんな年齢になっても
まだ方向がみつからず
まだウロウロしている母を頼りないと思うなら
どうぞ
学べるうちドンドンドンドン学んでください。

とにかく
女は度胸です。


各国を歩いたキキの初めのころのお土産。
ギリシャからのお土産が「これ」でした。
笑うしかない品々。その後も
彼女の世界旅行のお土産はドンドンヘンチクリンになっていったのでした。
それはいずれまた。


さてこおろぎは修羅場にいます。

採点が進みません。
こおろぎの想定をはるかに超えた解答が多くて
時間がかかります。
論述、記述式の試験は必ずこうなるとわかっていましたが
それにしても
辛い。



3月末締め切りの原稿2本が手付かずなのに
もう一つ増えました。


5月の学会に研究発表決定。
早稲田で開催だというので
なんとなく心動きつつも
今回はパスしようと思ったのですが
ご相談した恩師と後輩が「やりましょう!」とのお返事。

「食卓の布ーその文化的背景と機能ー」

素敵なタイトル。
思いついてしまったこおろぎは
もうやるしかありません。

恩師は大先生なのでお忙しいし
後輩は後輩で執筆中の論文があって

なんと明日締め切りのエントリーシート
こおろぎが書くことになりました。
神戸と大阪と札幌で
あれこれ討議。
なんとかなるものです。



そこに
お義父様から電話。
お昼ご飯でも食べようという誘いは
断れず。
最近ちょっと心配なこともあって
昼間からお酒も付き合ったこおろぎ。

帰りにふと見ると
お義父様のコートの裾がほつれています。

胸がいっぱいになって
御店の方に針と糸お借りしました。

さすがホテルのレストラン。
こおろぎに老眼鏡まで貸してくださり、

こおろぎ、
某ホテルの某レストランで
コートの裾直し。


その間ずっと
担当の女性がそばについていてくださり
いろいろおしゃべり。


何度か顔をあわせていた女性ですが
その接客、応対はいつも最上。

今日お聞きしたら
東京から転勤していらしたとのこと。
なるほど・・・と納得。



お昼からお義父様とビール飲んでも
こおろぎは全く平気。
ますます頭は回転。

それでもあれこれ雑用が待っていて
町内会の班長なのでさらに忙しく・・・

エントリー用の概要を書き終えたのは深夜12時をすぎていました。



キキからの電話で号泣していたら
コロ介がそばで
「嫁ぐ日前夜みたいだねっ!」と笑いました。


娘たち、よく聞きなさい。

嫁いではいけません。

母がさみしいからではありません。



いいパートナーがみつかれば、なによりです。
共に歩いてください。

でも「嫁ぐ」必要はありません。


こおろぎは結婚制度に疑問があります。

できれば制度にしばられず、個として生きてください。

おかあさんになることは素敵なことなので勧めますが

「嫁ぐ」のだけは
やめてください。

「嫁ぐ」って
「お嫁」に「行く」ってことですからね。
家族は最高ですから
家族は作りましょう。
増やしましょう。
でも

「お嫁に行く」必要は断じてありません。
難しいですか?
そうかなあ・・・・




さ、
あと30枚くらい採点しないとノルマ達成できません。


こおろぎ
若いシスターズに
沢山の勇気をもらいながら
日々すごしています。