涙・そして再出発

こんなに素敵な番組が
かつてどこにあったでしょうか。

昨年秋、AKUTSUさんから
「センセー、和の生活文化を踏まえた
生活に根ざした新しい感覚の番組を作りたいんです・・」

というご相談を受けました。

「センセー、イメージは大きなちゃぶ台です
それも、大きな大きなちゃぶ台なんです。」

それは
実に斬新な発想で

情報番組の枠を超えた
生活の便利な情報だけでなく
伝統と文化をしっかり確認していくという
ほんのすこし、アカデミックでもありたいとう
彼女ならではの
熱意に裏づけられたものだと
こおろぎは思いました。


あれは
イタリアンレストランでした。
チーフディレクターの彼女と二人、
前面ガラス張りの窓の外を眺めて
まだ漠然としたイメージを丁寧にたどりながら

「絶対に形にしましょう」と


何度も何度も繰り返したのでした。


外には粉雪が舞う
そんな日でした。

たくさんの困難、課題に
彼女は実に丁寧に立ち向かい
ひとつずつ片付け、
1歩1歩、着実に形していきました。

応援するこおろぎは
ただただ
彼女のイメージを具現化するお手伝いをするだけでしたが
本当に幸せな日々でした。


3月の「試運転」から
大きな手ごたえがありました。

4月3日の初回は
広島から送っていただいた山ほどの桜の枝が背景。

以来毎回
季節の花、そして行事のしつらい
特産物などの盛り付け、
ときに料理

こおろぎは本当に幸せでした。

毎回、スタジオの装飾やその配置が変わることは
どれほど多くの技術の方たちにご迷惑であり
ご負担だったことか

それが端午の節句の兜であっても
こおろぎが函館からかついできた七夕の竹であっても
真夏のしつらいでも
クリスマスツリーでも

そして
今回のお正月飾りであっても


みなさん
本当に億劫がらずに
丁寧にライトを当て
よりキレイに見える方法を考えてくださいました。


花新聞とのコラボレーション企画の際は
スタジオの全員が
山ほどの花の名前を覚えてくださり、

一本一本、一輪一輪の花たちが
イキイキと
美しく見えるように
心配っていただきました。


ほんの何秒かのことに
こんなに大勢の方がたが
少しの妥協もせず
真剣に取り組んでくださるということを
知りました。


ざっくりと
適当な仕事で生きていく人たちも
大勢いる世の中ですが

こおろぎはこの1年、
AKUTSUさんが作った世界の
「ほんわかファミリー」で
大人として絶対に必要な
まじめさと情熱を
改めて学びました。

真剣に働くということは
必ず
必ず
いい結果を生みます。

一攫千金などないのです。
棚からぼた餅もありえない。
前回のブログに
「りきまるにマシュマロ」という
わが家発の格言を書きましたが
それはやはりレアケース。



視聴率も悪くなく
多くのファンを得て
どんどん評価が高くなり
こおろぎに至っては
生活美学のシンポジウムで報告するほど

この番組は多くの場面で期待され
みんなに愛されていました。


けれど
放送業界には放送業界の事情があったようです。
番組にもスタッフにも
なにもかもになんの問題もなくても

どうしても終了しなければならない事情があったようです。


そのことが分かった秋の日、
こおろぎは
チーフディレクターのAKUTSUさんの熱意と
番組のスタッフ全員のすばらしいチームワークが
もったいなさすぎて
切なくて切なくて
どんな風にその日をすごしたか思い出せません。


自分のことより
スタッフの生活や
今後のことを心配する彼女の
そのプロとしての姿勢も
その悔しさを乗り越えるプロセスも立派で
心から
尊敬に値するものでした。


まだ30代の若いチーフディレクターには
大いなる前途があるでしょう。
そして
このすばらしいチームに関わったすべてのみなさんは
きっとこの番組で学んだことを、
培った「こだわり」を
これからのテレビ業界で生かしてくださると信じています。



12月に入ってからすぐに飾り始めたクリスマスツリーは
毎回少しずつ装飾を変え、
最終回は最高にキラキラにしたのでした。
気がつけば
カメラマンさんも
技術の方も、
大道具の方も
あっちをキラキラにしたほうがいい
こっちもそっちも・・・と
そして自らキラキラを手に
飾ってくださったり・・・


普通、最終回を迎える番組には
こんなに情熱は持てないとのこと、
しかし
この番組は奇跡の番組でした。
年内終了が決まってから
ますますのチームワークと
全員のパワーが炸裂。

このこともまた
大いなる感動であったのです。

最終回
こおろぎはクリスマスとお正月、両方のしつらいをするために
朝8時15分に自宅を出発。
元気に元気にスタジオに入りました。

全員が元気いっぱいに番組を作ったのでした。


けれど
泣かないはずのこおろぎは
番組が終わったとき、
スタジオの一番奥で見ていたのですが

出演者だけでなく
大勢のスタッフどのかたの努力も熱く熱く伝わって

もうあふれる涙をとめることができませんでした。

センセー、さみしいです・・・と
番組終了で東京にもどる若いディレクターさん、


センセー、お別れがさみしいですと
初回からこおろぎのアシスタントをしてくれたCちゃん

ほか全員の顔が見えなくなりました。


どんなものにも終りはあります。
でもちょっと早すぎましたね。

でも
学んだことの大きさを胸に
どうぞみなさん
若いのですから
これからにつなげてください。


大きなお供え餅の後ろで
オイオイ泣いていたら

大きな輪に呼んでいただきました。
こおろぎなど無力だったのに
みなさまありがとうございました。

こおろぎは幸せでした。
何十年も花にかかわり
料理やスタイリングに関わってきて
さらに生活文化と美学を学んだ
そのすべてを
形にするすばらしい機会を得ただけで幸せなのに

こんなに大勢の
すばらしいプロの集団で
ひとつのものをつくり上げる喜びを知りました。
妥協のない仕事をする真摯な姿勢
よりよいものを作ろうという
褪せることがなかった情熱
そのどれもが
こおろぎの新しい宝になりました。


若いプロのみなさんに
あまりある大切なことを教えていただきました。

ご挨拶も涙涙で
失礼してしまいましたが
どうぞお許しください。

こおろぎは
教師でもあり、母親でもあるので
一生懸命仕事をする人に会うと
力いっぱい生きる人に会うと
人並みはずれて感動してしまうのです。

お別れが悲しいのではなく
あまりにも皆さんがすばらしくて

その涙でありました。


昨夜は
東京に帰るスタッフのお別れ会も兼ねたパーティーがありました。
総集編は報復絶倒。
全員が笑い転げながら、
なぜ、こんなにすばらしい番組が
終わらなければならないのか
誰もが思ったにちがいありません。


長くお仕事をしていらした方がたが
口をそろえて
今までで一番楽しい現場だった
番組だったと
おっしゃいました。

でも
これからです。

全員がこの経験を生かして
次ぎのステップに歩きだすということです。


こおろぎとて同じです。

学問を形にするという
そのことの意味も確信しました。
そのことの必要性も痛感しました。



パーティーの席で
ほんわか土曜日のロゴやイラストを担当された
佐々木小世里さんと親しくお話させていただきました。
嬉しい出会いです。
彼女もまた
番組をこよなく愛した一人でした。

この一年、こおろぎにたくさんのエネルギーを
与えてくれた番組は終わりましたが
どうぞ、「その後」のこおろぎにご期待ください。


番組や、お教室の写真はまだまだたくさんあります。
年末年始は論文書きで少々大変な日々となりますが
せっせとブログに乗っけていきます。
こちらもご期待ください。

こおろぎ組のみなさまに
素敵な年末の日々を!



そして
こおろぎ的追申

スタジオから
クリスマスツリー4本をはじめ
お貸ししていた橇、植物、器、あれこれあれこれが
どっさりわが家に戻ってきました。
これはもう単身者の引越し以上。

年齢に勝てず、あちこち支障もあり
山ほどのスタジオ帰りのグッズで喘息も併発。
さらに他の持病もウズウズ。
さてこおろぎ、どう片付けるのでしょうか!
この楽しい苦境をどう乗り切るのでしょうか!
どうぞどうぞ応援のほど
よろしくお願い申し上げます!

さらに業務連絡です。
ご存知の方も多いと思いますが
12月31日はこおろぎの生誕祭です。
ま、どってことのないお知らせではありますが
お忘れの方はいま一度、手帳にお印いただけましたら
幸いでございます。