大事件


こんなかわいい日もありました。

こおろぎの家に引き取られる前の写真です。
兄弟姉妹4匹の中で
いつも口をあいて
ボーっとしていた一匹だったそうです。

お母さんのすみれちゃんに
ぴったりくっついて離れない
一番の甘えん坊で
グズでのろまの一匹だったようです。


したがって
お姉さん、お兄さんたちがみな
立派なお宅に引き取られていったのに
引き受け手のないまま
大きくなった子犬でした。


それは去年の8月のことです。

こおろぎはとてもとても疲れていました。
6月から足腰が痛くなったママは
85歳にして手術。
毎日病院通いと仕事。


あれもこれも大変でした。
そしてコロ介もまた
なんだかシンドイ夏でした。


ふと
すみれちゃんの赤ちゃん、一匹残ってる子犬、
どうなったかしら・・・


ふと
本当に
ふと
ある日そう思ったのです。


その日のうちに
りきまるはやってきました。
半日遊ぶ予定が
1日わが家にいて
次の日もいて
ずっといることになったのです。




すでに4ヶ月近い子犬は
大型犬ゆえか、
子犬とはいっても
とても大きくて

でも中身は子犬。

階段の多いこおろぎの家では
登ることも
降りることもできず


こんなに大きいのに
こんない大きいのに
こんなに大きいのに

と毎日毎日言われながら


それでも
自由に登ったり降りたりできるようになるまで
ずいぶん日がかかりました。


いろんな顔を見せてくれる
実に
ひょうきんな家族になったのです。

しかしながら
生まれがいいというのでしょうか
DNAが優れているというのでしょうか


品がよすぎて
食べることに興味がなく
闘争本能も全くなく

散歩で出会うチワワに吠えられては逃げ帰り
気の強いポメラニアンには噛まれそうになり


それでも最近は
年上の黒シバの「くるみちゃん」に
やっとの思いで、「気持ち」を伝えたりきまるでした。


トリミングから戻ると
実に美形になります。

しかし
ほどなく
モップ以下のボロ雑巾のようになります。
私たちは
そのどの表情も大好きでした。



コロ介のソックスを飲み込んだのは先月のことでした。

こおろぎの目の前で飲み込んだので
すぐに病院に連れて行けました。
注射一本で吐き出して
めでたしめでたし、
切開手術もなく大喜び。
そんな大事件で
いろんな反省をしたはずでした。




どんなに大勢の生徒さんや来客があっても
絶対に吠えない
本当に穏やかで
そしてひょうきんで甘えん坊の
ワンコ。


食が細いわりに
いつもいつも元気一杯で
飛ぶように歩く
大人気者のりきまるが

突然歩かなくなりました。

何も食べず
水も飲まず


そして
噴水のように吐き
何度も何度も信じられないほど何度も。


足がぐらつき
噴水のように吐く・・


医者の卵の卵の卵ではありますが
キキの医学部5年の知識では
脳かも・・・
とのこと。

脳?

こおろぎの乏しい知識を駆使しても
脳かも・・・と思う局面が多々。



でも、水のような下痢がはじまると

脳じゃないわ・・・
ウイルスか
胃腸か
この吐しゃ物なら
すい臓かも・・


とにかく病院へ。

キキとコロ介と
ケンケンもお世話になった
世界一の動物病院へ。


兄弟より何キロも細いりきまるは
この2日でさらに3キロ体重が減り
このサイズにして15キロ。

立ち上がれず
目もうつろ。


血液検査の結果ではすぐには分からず。
でも強い炎症反応。

膵臓が悪い可能性も高く
その場合は時間がかかるとのこと。

万一なにか飲み込んでいたら
かくなる上は今回は切開かも。


いずれであれ
りきまるは入院となりました。



おいて帰ることになったとき

やっと立ち上がったりきまるに
がんばって、と言ったところで
涙があふれました。

りきまるも泣いているようでした。


おかあさん
苦しいです
本当に苦しいです



そんな声が聞こえました。


ケンケンは老衰でした。
これは仕方のないことでした。


でもりきまるはまだ1歳です。

やんちゃで元気で
たくさんのりきまるファンがいます。


外科的な事故であれ
内臓の疾患であれ
かわいそうすぎるお話です。


病院にお預けして
こおろぎは大学に行きました。
採点と評価の締め切りでした。

仕事を終えた夕方、陽も暮れそうな大学の庭から
病院に電話。


落ち着いているとのこと。
バリウム検査の結果はなんともまだいえないとのこと。
今日は会わず、病院に任せてほしいとのこと。



どうにもならないことはどうにもなりません。
そういうことは百も千も承知のこおろぎですが
なにもかも悔やむばかり。




コロ介も元気がなく
みんな落ち着かない夜となりました。

ケンケンを亡くして間もないのに
りきまるを迎えた私たちでした。

今またりきまるを失ったら

悲しさはいかばかりの深さでしょうか。
でも覚悟しなければならない

それほど
衰弱し
希望のないりきまるでした。


真夜中目をさますと
となりにコロ介がもぐっていました。

起こすと
「怖くてひとりでいられない」と
珍しい弱音。
何もかもが不安な夜でした。


そして
今朝9時すぎ
私たちは再び病院を訪ねました。
検査結果を聞くためです。

それは本当に恐怖でした。




りきまるはいいワンコです。
お金もかかるし
しつけもできていないし
運動も大変だし

でもいいワンコです。



本当にかわいそうなことをしました。


先生の説明ガ始まりました。


血液検査の結果とバリウムの結果
それはどれもこれも
教科書でいつか見た内容に近くもあり遠くもあり
祈る思いで聞きました。


昨日のバリウム投与後、その流れを
時間を置いて、何度も何度も調べてくださった写真は
どんなドラマよりドラマチックで
逃げられない現実でした。


夕べの段階ではどこかに流れを止めるものがありそうで
最悪の場合は腸の切開かと先生は思われたとのことです。





ところが今朝、
止っていたバリウムが少し流れた気配があり、
りきまるはなんだか元気に見えたとのこと。


院長先生は
そんなりきまるを
散歩に連れ出してくださったのだそうです。


心から感謝します。


札幌には円山動物病院という
すばらしい獣医さんがあります。
本当にすばらしい先生がいらっしゃいます。


すべての検査と治療は完璧でした。
下痢と吐き気のどちらを先に止めるか
いつバリウムを飲ませるか
あれもこれも
先生の判断は完璧でした。


朝の散歩など
りきまるに
再びできるなどとは思えませんでした。



「結果ですが・・・・」


それは本当に
悲しい宣告を受ける家族でした。


「出たんですよ。散歩で」


「・・・・・」





「りきまるくん、何かを産み落としタンですよ」





「・・・・・・」





看護婦さんが持ってきたのは


「ああああああああつ!」


ずっと探していた布のドーナツ型のおもちゃでした・・。



「コレが詰まってたんですね!苦しかったでしょうね!」


「えええええええええええっ!」


先生曰く、いつ飲み込んだものかはわからないけれど
バリウムで押されて動いて肛門まで行ったのではないかとのこと。


ソックスを飲み込んだあと
危険なので捨てたはずのおもちゃでした。

布製の柔らかいリング型で
りきまる、赤ちゃん時代の大のお気に入りでした。

きっとこおろぎが取り上げて捨てたものを
拾ったのでしょう。

昨日、今日飲み込んだのではないはずです。

ずっと体の中にあって
何事もなかったのですが

たぶん突然詰まったのでしょう。




とにかく
りきまるは復活しました。





奇跡としかいいようがありません。

検査に出した血液の結果はまだ出ていません。


が、りきまるくん、病院では吠えるし騒ぐし
「どうぞお引取りください・・」的なアドバイス
本日無事退院してきたのでした。


連れられてきたりきまる、
それはもう
千切れるほどシッポを振って完璧に元気。



は?


え?


うそ・・・




ヘトヘトヘトヘト
本当にヘトヘトヘトヘトの
私たちでした。



あれもこれも書きたいことがたくさんありますが

本日はこれまで。


こおろぎに夏はありませんでした。
札幌、秋風。


ああ
人生、思い通りにはいかないものです。

ワンコもまた
犬生、思い通りにいかないなあ・・・と思っているのかもしれませんが

りっきっまっるっに告ぐっ!


ドアホっ!!!!!!!!

うっかり
おまえのために
涙を何度も流した家族の心労をどうしてくれる?
化学の講習を二日も休んだコロ介
バイトを二日も遅刻したキキ
自分がチーズを食べさせすぎたからだと
チキンハートで悩んでるカブトムシ
ああみんなの心労を
どうしてくれる?
そもそも
この莫大な医療費、どうする?

ああ悔しい。
なに?
おもちゃを喰っただと?
肛門から出てきただと?
この検査三昧
この病院あげての大騒ぎ、
あんた
どうする気?!

情けない、実にお母さんは情けない。

まあね、
懲りない男っているもんだわ、犬にも人にも!


本日は本当にこれにて終了!
ドアホっ!

ひとつだけ学んだことがあるとすれば
なんでもぎりぎりぎりぎりまで諦めないほうがいいのかも・・・
ってことかしらねっ!

肛門の、本当に、肛門のその際での逆転、って
あるんだってことだわねっ!
ああ
ああ
ああ