こおろぎミシュラン


1日中市内をかけまわる事務仕事でくたくた。
区役所、銀行、社会保険事務所、税務署・・・
世の中には難しい言葉がたくさんある。
わかんないよね、その用語。
パソコンワードもそうだけど、役人用語もワカラン。
障害のあるご夫妻が私の前にいたのだけれど、
「分かります?分かります?」と保険事務所。
「お父さん、わかる?」心細そうなお母さんがとなりのお父さんを見上げる。
「かあさん、よくきいて・・」手足がご不自由なお父さんが
おかあさんにちゃんとメモしなさい、といいながら不安そう。

ご夫妻が頭かかえる気持ちよくわかった。
ワカラン。その国保、年金の仕組み、ワカラン。
もう少しで間に入りそうになった。

やっと歩いていらしたお二人なのに
「お家に帰って、資料集めてみてください」と一言。
どうなの?これ。


税務署ではこおろぎがかわいそうなオバサンの役割。
「あなたのお仕事、結局どれが本当なんですか?」って
どれも本当なのに・・。
給与と報酬と謝礼と原稿料と違う名目の源泉徴収ばかりで
金額も超微妙。
教授といっても嘱託だから普通の教授の給与では全くないし
「全部集めてこれだけですか?」って、
まるでどこかに隠してでもいるようないわれかかた。


「こんな収入でよく税務署に来たね!」といわんばかりの対応。
「あなたの美容院と衣装代は経費かなあ・・。テレビで着たら絶対に普段着ないですね?」
あら、なんという、なんという質問。
叶姉妹は衣装代をどうやって申告しているのでしょうか。
普段と仕事の区別、どうするのでしょうか。
こおろぎ、イツカ絶対にに叶姉妹になってみせます!
無理無理無理、そもそもこおろぎ一人っ子。

でもいつかきっと高額納税してみせます。
美容室代も経費かどうか
こんなこおろぎの、こんなちっぽけな頭ですが
このパヤパヤの髪をこの長さで維持してこそ
やっと人前に出られるというものなのに
ここまで厳密に聞かれるのなら

はい、わかりました!
もう美容室には行きません。
ボウボウの髪で
ジーンズにTシャツで
ゴム草履はいて生きていきます。どうぞ
町で見かけても声などかけないでくださいっ


どっさり高額納税するそんな日がきても、
こおろぎ札幌には納めませんから!絶対に
札幌には納めませんからねーだっ!


あああ、そんな日、来るわけないよなー・


ヘトヘトのこおろぎには夜は夜でお仕事。
例のお店のウンターではありません。
コロ介のスポーツウエアさがし。
二人で閉店まぎわのショップに飛びこんだ。


8時すぎてコロ介と食事に行った店のこと。
いつも行くお店ではな新しいお店を発掘しようと
気になってたお店に行ってみた。
いやあ、なかなかかわいいカウンターとボックス。
土ものの和食器をどっさり積んでいる。
お店はびっしり。奥さんが一人カウンターでつくっていて
コロ介に瓜二つの派手なお顔立ちの女の子がフロア。
さてミシュランこおろぎ、久しぶりの100点満点の15点。


ビールとウーロン茶はすぐにでてきた。
でももろキューも、ライスコロッケも、ほうれん草のサラダも
スペアリブのトマト煮もなにも出てこない。30分でてこない。
やっと出てきたサラダを食べてさらに20分たったら
おねえさんが来て「スペアリブ、今日できないんです」


???
「早くおっしゃってくださればよかったのに」とこおろぎ。
笑顔で穏やかに答えたので
コロ介に「大人になったね」と褒められた。


「注文した時、できるかできないか、すぐに答えられるだろーがっ!」と
いつものこおろぎなら卓袱台ひっくりかえすところだけど、
私も大人になったもんだわ・・・。


で、ライスコロッケともろキュー、まだ作っていなかったら
いらないわ・・・と言ったら
やっとでてきた。
考えられない。
もろキューなんてさ、キューリたたいて味噌添えたらいいわけでしょ。


さらにカウンターのこおろぎ母娘の隣全員6人の食べ終わった食器が
ずらっとびっしり片付けられていない。その6人とママさんが
延々とお喋り。
ひどいもんだわ。


ま、それなりにおいしくいただいて帰るとき、
フロアのコロ介酷似の女の子が
申し訳ありませんでした、と謝ってくれた。
「お忙しい日だったのね」と大人のこおろぎ。


「スミマセン。どうぞまたいらしてください」とコロ介酷似。
「きっとまたきますね」と立派なこおろぎ。


でも振り返ると
カウンターの肌のきれいな、そしてそのきれいな肌がとても自慢の
ママさん、ずらっとならんだカウンターのお客とげらげらお喋りの続行。
初めてのお客のこおろぎ母娘に目もくれない。
これ、ダメ。



コロ介酷似にはわるいけれど
ミシュランこおろぎ、怒りの爆発。
この態度はないでしょう。


食器の選び方ももりつけが抜群なだけに残念。
全部土モノのたぶん作家モノも多い。
おどろくほどの品ぞろえ。コロ介が
「うちと同じのたくさんあるね」と鋭い目。
でもお客のとりわけ皿のひどいこと。
どこかのおまけか、引き出物。
プリントモノの激安小皿。考えられない安物で
吟味なしのお皿。


なるほどね、この油断、裏表が
商売の明暗を分けるってことか。


さてお店を出たあと、今ひとつおなかいっぱいにならない
こおろぎ母娘は以前から気になっていたドイツ料理のお店に行ってみた。
初めて行ったお店で
食事が終わっているのでソーセージとザワークラウトだけでいいですか?
というズーズーしい相談をしてみたら快諾。
美味しかった。そしてマダムの応対が満点。
要するに「人」。
あらためて思う。
店は人だ。



学校も病院も美容室も、
区役所も社会保険事務所も税務署も
なにもかも「人」。

大人になってからは誰も注意してくれない。
他人を見て自分を修正するしかない。
謙虚な修正。これができて、真の大人ってやつかもね。