優しい春


先週末からのアレルギーは悪化の一途をたどり
あわや喘息発症かとおびえたものの
なんとか終息の気配。
出会いもあり別れもあって
なにかと集いも多かった。
不調のなか出席させていただき
思うところもどっさりの日々、
要するに多忙でした。


さてわが家に優しい春がやってきた。

コロ介の受験が終わった。
実に教育不熱心。このほぼ3ヶ月は塾のお弁当をせっせと作ったものの
3者面談も忘れ、北海道の入試情報も全く知らず、なにもかも
コロ介任せだった。
昨年末、いよいよ志望校を決めるときになって大慌てしたものの、
所詮親が慌てても仕方ない。
中1のとき、「私、お勉強嫌いだわ」と宣言したコロ介は
中2で奮起。生徒会もあれもこれもコロ介なりの活躍めざましく
たよりない親などあてにせず、塾の先生を信じてコツコツと勉強していたのね、
一年生のときは、限られた高校しか行けそうもなかったのに
ついにどこの高校を受験してもいいよ!というところまで到達。
この3ヶ月は実に立派だった。



アレルギー、低血圧によるひどい頭痛、喘息など
持病かかえながらも体調もよく受験の日を迎えた。


そして発表の日、
パソコンの発表が遅い。
遠い学校でもないので直接見に行くぞとコートを着たとき
画面が出た。


さーて見るのはこおろぎのお仕事です!


「あ、ない!」

「うそっ!」
そして
「やっぱりね・・」


こおろぎはこういう時のために生きてきたとまた思いました。
何年か前、キキの北大医学部発表の日もそうだった。
ちょいと受かっていそうな気配もあって母娘、直接北大に行ったのでした。
掲示板が張り出されたとき、動けないキキに変わって人ごみかきわけて
見に行ったのもこおろぎ。
そのときも全く同じだった。
「あ、ない」
「うそっ」
だった。


コロ介、マサカの結果だった。自己採点も悪くなかったのだけど
倍率が問題だったのかしら、結果は結果だわ。
こんなこともあるんだわね。


ふと見ると
コロ介の大きな目に涙が光っていた。
そして大きな大きな本当に大きな涙がぽろっと一粒
本当に一粒こぼれた。


「ごめんね」


偉い。
コロ介は偉い。
学業放棄かと思われた日から
よくここまで頑張った。
北海道の最上位校に挑戦できるところまで来たことだけで
母は十分です。ただ北海道は公立高校至上主義。いくつかの優秀な
中高一貫校をのぞいて、公立高校に失敗したら、あるいは無理だったら
私立に行くという風潮がある。首都圏とは全く違う。
確かにコロ介の第一志望は公立高校だった。その希望が叶わなかったのは
残念。だがだれが失敗しようと思って試験に臨むだろうか。
コロ介は確かに9割とれる受験生になっていた。
だれでも予定通り、予測どおり、望みどおり希望を叶えられるとは限らない。
第2、第3志望の道にも花は咲き、未来もある。



なにをかくそうこおろぎ自身、キキと同様、18歳で北大に失敗した。
その結果、浪人が許されず、第2志望どころか、考えてもみなかった東北地方の考えてもみなかった学部に入学した。哀しいかな、その現実を受け入れられず
その後2年間覆面受験生として受験勉強を続け、大学生活に支障をきたした。
その後研究生でもぐりこんだ北大だったが、ここでまさかのイジメの連続。
体調くずして辞めたときの哀しさはこのトシになってもまだ消えない。さらに後遺症は続いて42歳で関西の大学に復帰するまで2流、3流、それ以下の道を歩いてきた。キキも同様。努力して入った広島の中学を親の転勤で北海道に移動。高校は北海道のトップ高校志望者の中で1番という模試の成績だったにも関わらず、こおろぎが許可せず函館の私立に入学。T大志望も許されず、混乱のうちに受けた北大医学部に失敗。一浪のセンターではマサカの解答欄ミスで数十点失い、北大を諦めて医大に合格。
母も姉も札幌にいながら北大に受け入れられずずっこけながら歩いています。
離婚+借金劇も手をつないで乗り切った二人なのです。パパに出会って今は幸せだけれど、それはたぶん5流以下の人生です。
でも母と姉をよく見てみなさい、母も姉もたぶん、それぞれの年齢の平均的な女性よりきっとたくましい。きっと楽しさも喜びも知っています。


コロ介15歳の春は苦い思いを経験しました。
でも第2志望に歩みを進めるのも悪くなどありません。
みんなそうなんです。ずーっと第一志望を歩ける人なんてそういないものです。


コロ介は2つの私立高校に合格。
そのうちの1つは、教育不熱心なこおろぎが珍しく関心を持って
説明会に行ってきた高校。試験もかなりむずかしく、
近年の進学率もめざましい。
お金があったら入れてやりたいなーと思っていた学校。
お金はないけれど、コロちゃん、素敵な学校です。
どうぞたのしく、凛々しく通ってください。
母はきっと応援します。


厳しいながら語学教育も研修も、個性的な授業が待ってます。
コロ介の個性もきっと大事にしてくれます。



落ちて残念、落ちてかわいそう、落ちて恥ずかしい・・
そんな見方も確かにあるかもしれないけれど
それは正しくはない。
3年間コロ介を見てきたこおろぎ、とりわけこの3ヶ月のコロ介の
快進撃を毎日見てきたこおろぎは
第一志望に入れなかったことに同情はするけれど
その努力を誇りに思ってます。


そしてこおろぎはとても素敵な経験もした。
コロ介を心配してくれていた何人かに知らせたところ
「祝ご入学」というメールがいくつも届いたのだ。
そうなのよ、コロちゃん、立派におめでとう、なのよ、この春は!


難関○○高校入学おめでとう、というメールもあったし
コロちゃんはどこに行っても、キラキラ光って頑張れますというのもあった。



聞けば今年の入試は大波乱だった様子。なぜ、どうして、という結果が
多かったようだ。コロ介のような仲間もずいぶんいる。
かわいそうだの、残念だの、悔しいだの、はずかしいだのと
さわいでいる親たちがきっとたくさんいるのだろうと推察する。


おふざけじゃないよ!
誰がかわいそうなもんですか!
かわいそうなのはプライドが傷つく親の側だったり、
恥ずかしいのも親だけなのよ!
そしてそれほど世間は気になどしていないのに
恥ずかしいと思うのは自意識過剰というものよ。



全日本の第一志望に失敗した小さいお子さん、若い衆に告ぐ!
失敗の原因はしっかり追求し、反省はしなさい。
そのためにかかる費用はいつか必ず親に返しなさい。
でもひるむことなく、次の道を胸を張って歩きなさい。
その道を進むことは何一つ恥ずかしくもなく、情けなくもないのですから。


見なさい、周囲の大人たちを。
みんなたいした人生など歩いてはいません。
集まれば愚痴をいい、誰かの噂話をし、
たいした仕事もしていないのに
みんな相当に疲れていて、
若い日の失敗も間違いもすっかり忘れて
数学も英語も国語さえ、君たちならスラスラ出来る問題も
今は何もできないくせに
君たちの失敗を批判する。
気になどせず歩くことです。



コロ介はたった一粒大きな涙をこぼして
「ごめんね」とひとことちゃんと謝って

○○高校できっと頑張るからね、としっかりと言った。


コロちゃん、コロちゃんのデッカイ涙と
ごめんね、という一言を
こおろぎは一生忘れません。
よく言いました。よく涙を我慢しました。

そしてこおろぎとコロ介に届いた
「祝ご入学」「高校入学おめでとうございます!」という
さわやかなメールを生涯わすれない。


ちょっとせつないときの一言の重さを感じた
優しい春です。



さてコロ介、○○高にはどんな素敵な青年がいるでしょうか。
ジャニーズ系もスポーツ系もどっさりいることでしょう。
成績優秀で否のうちどころのないナイスガイもいるにちがいありません。
スネに傷もつヤツもきっといるに違いないし、心の痛みをしっている人も
きっとたくさんいる。
コロちゃん、明るさが勝負のコロちゃん、明るさに加えて
どうぞもっともっと優しい人に育ってください。


沖縄にいるキキに電話で結果を知らせたら
やっぱりあの時と同じだった。
「うそっ!」


ひめゆりの塔にいるから大きな声がでないと泣き笑い。


そしてコロ介に
「しかたないね、よくやった!
○○高校はマジ楽しいらしいよ!
勉強もさせられるから、むしろよかったジャン!」
とのエール。

「お土産、何がいい?」
「沖縄ハイチュー!」

そんな会話が漏れ聞こえてきた。



こおろぎには素敵な娘が二人いる。
かなしいほど不細工だけれど
こおろぎには本当に素敵な娘が二人いる。