丁寧な仕事


仕事しながら
久しぶりにスゴイテレビドラマを観てしまった。
井上真央が芸者さんを演じた「花いくさ」である。
100年に一人といわれた芸者、岩崎峰子さんの半生で、
岩崎さんご自身がいろいろご指導されたという。


1949年生まれの岩崎峰子さんは
若い頃からこおろぎの憧れの女性の一人だった。
雑誌等で拝見する姿は美しいだけでなく
凛々しく、いわゆる品格があり
さまざまな話題に振り回されない強さも窺がえて
祇園という音はそのまま岩崎峰子さんを連想させた。


若い井上真央さんが
妖艶な大人の芸者さんまで演じられるのか
不安だったが
彼女はスゴイ。完璧だった。
角度によっては「花より男子」の高校生を演じた顔になるが
それは当然で
99%、彼女は当代きっての名女優の顔だった。
中でも俳優との別れを決めた、ただただ泣くシーンの
横顔は、美しすぎた。幼い彼女の顔がなぜそんなに変わるか、
これが女優だ。アイドルではなく、女優なのだ。


それにしても名取祐子氏の義母役は彼女の実力なくしてありえない名演技だった。
かわいい女性の、深い哀しみが丁寧に演じられていた。
そして戸田菜穂さん演じる、問題の多い芸者役は、
彼女の代表作としてあげてもよいほどの迫力で、
こわいほど哀しさが伝わった。
葉月りおなさんの、健気な芸者役も
大人の女性の演技と迫力があり、
彼女意外できなかったと思う。



原作がいいのは当然だが、
脚本の力は大きい。
あれもこれもさらりと描くのではなく、
峰子にしっかり焦点を定めて揺れない脚本、
とりまく周囲のバランスが絶妙。
前述した、ただ泣く場面に
想像を超えるほどの時間を割き、
さまざまに角度を変えて撮る緻密な演出は
近年にない感動だった。


そう、脚本がよい上に演出とカメラワークがよい。
これが理想の仕事だ。大人の理想の仕事である。

あああ
いいドラマだった。
あまりに美しい場面が多くて
こおろぎうっかり涙ぐんでしまった。



この忙しいときに
センセー、テレビドラマ観て泣いてたんですか?!
と、あちこちから叱られそう。
スミマセン。



観ながらちゃんと調べるものは調べ、洗濯物も干し、
腹筋体操もしたし、書くものも書きました。
CMの間にお茶碗も半分洗ったし、スクワットもしましたから
許してください・・・


誰に謝ってるのでしょう・・・


このドラマの中に祇園の風習がいくつか登場。
今書いている論文に大ヒント発見。
ね、ドラマもいいドラマはアカデミックでしょ・・・


テレビはいろんなことを考えさせる。
先日風水の先生が
「皮のソファーは動物の魂が入っているからだめ」と言っていた。
布ならいいらしい。
同席していたタレントさん全員が「えーっ」と驚いてたけど
「じゃあ靴脱がなきゃ!」とか
「布と言っても、羊をまる裸にするウールはいいんですか?
綿は植物として生きてたのに、いいんですか?」くらい
聞けないもんだろうか。
肉も魚も食べながら革製品は魂が・・・ってのはどうなの?


同じ風水の先生、トイレにトイレットペーパー積んでいるのをご覧になって
紙は邪気を吸い込むから片付けて、と指導。
紙が邪気吸い込んでるなら
図書館と本屋はどうなるの?
本とノートが相手のこおろぎはどうなるの?

このての目に見えないモノを語る人たちを前にすると
みんな「へー」としか言わないのはどうしてでしょ。


テレビもいろんな番組があるから
これからもテレビを観続けよーっと。



はい、わかりました。もうテレビは一生観ません。
せっせと仕事します。



すみません。ウソです。ときどきテレビを観ます。
観ながらちゃんと仕事しますから許してください・・・