真っ赤なこおろぎ闘病記その後


真っ赤になったこおろぎはその翌朝、つまり昨日の朝、おそるおそる鏡をのぞいて絶句。もう生涯この顔、この姿か・・・と思った。


ことの発端はさらその前日の早朝だった。
カフカはかつて凄い小説を書いた。
朝目覚めたら別のイキモノになっていたという
奇抜な発想。それが私の身に起こったのかと本当に思った。
自らをこおろぎと名乗った罰か、
数々のこれまでの悪行が体内の細胞を使って
爆発したのか、どうであれ、一瞬何が起こったか分からなかった。とりわけ、
頬の内側の奇妙な腫れ方、全身の赤い水玉。そして顔全体の真っ赤な発疹。


だがそれは皮膚科の診察と投薬で一息ついたはずだったけれど・・
午後と夜、薬を飲んで塗ってみたものの、さらに翌朝はもっともっとひどいことになっていた。


全身はミニーちゃんとか、恐竜家族のガンコちゃんのドレスを思わせる派手な水玉状態。
顔はもう、誰だか分からないほどの腫れ方。ケロイド状に湿疹が繋がった。
唇は2倍になって井上和香より和香っぽくなっている。ドナルドダックにそっくり。
もー、もー、もー、どーしよーっ


口内炎は快方に向かい、問題なし。
でも痒みは増して、論文どころの話ではない。
うろたえて主治医の一人でもある友人に早朝から電話とメール。
大騒ぎした結果、とにかくもう一度前日の皮膚科に飛び込め、ということになった。
バタバタと皮膚科に行ったら、早い時間なのに水虫のオジサンが暇そうに座っていた。この名医にふさわしくないオッサンだけど、医者は患者を選べないのね・・。
もっとも水虫の治療じゃないかもしれないけど、お顔の雰囲気とすわり方から慢性の水虫と確信した。そのオッサンが私の顔を見てびっくりしてすぐに目をそらせた。このオッサンに同情されたのかと思っただけで、なんとしても社会復帰してみせるぞとこころに誓ったこおろぎだった。


オッサンの次に呼ばれたこおろぎを見て看護婦さんは驚きもせず、
「いかがですか?」とにっこり笑って冷静。さすがプロ。
ここで「あら、ひどくなりましたね」といわないところがカッコイイ。
「ご覧の通り、昨日よりひどくなりました。」とこおろぎ。するとゆったりとゆったりと上品な先生が登場して
「いかがですか?」これまた美しい笑顔。
ああ、この静かな日本語、医者には絶対に必要だと思ったわ。
義父の以前の主治医はとにかく大声で威嚇するところから始まるので
小さな傷がどっさり大きくなる気がする。そして滅入る。
でもこの皮膚科の先生、本当にやさしく知的。


「昨日も申し上げましたとおり、1つや2つのエピソードで発病されたのではないと思いますので、お時間はかかりますね。でもイベントがお続きとうかがってますから、ちょっとお薬を変えましょうね。お注射もいたしましょうね」
あくまでも温和でゆったり。

いつものこおろぎなら
「だったらなんで昨日、注射して強い薬にせんかったんじゃいっ!」
ど怒鳴るところなのに、すっかり彼女のペースに巻き込まれて
「恐れ入ります、よろしくお願いいたします」なんて上品な患者のこおろぎ。



要するに坑ヒスタミンの皮下注射。即効性はないかもしれないけど、週2回しかできないとのこと。薬は予想通りプレドニン。賛否両論の副腎皮質ホルモンだけれど、
避けて悪化させても大変。そこは熟慮の上の判断。慢性の疾患ではないので一気に解決するのが得策。これは昨日、おむかえのO医院の先生にもご相談済み。
内科の先生にも相談していることも皮膚科の先生はご存知。
これからの医療は患者が納得する医療でなければならない。当たり前だが
これがなかなか難しい。先月のこおろぎの歯科医院のときもそうだ。
少しでも治療方法に疑問があれば、考える患者にならなければ後悔する。
義母を不要な闘病生活の末、手遅れで亡くし、義父は幸い完治したが、
最終的にお世話になった病院に到達するまで、NOといえない父が不要な検査を繰り返されてあちこち遠回りした。
熟慮の上病院を選んだのは私とカブトムシだった。そこで出会ったのが
今私たち家族が最も信頼している外科医である。彼との会話で1つずつを判断しながら冷静に治療を選ばせてもらった。悔いがない。
ただ、主治医を変えることや、病院を変えることは大変な勇気のいることだと思い知った。しかし、親兄弟、子供だったら絶対に納得していたい。たまたま遭遇した
医療機関の一瞬の判断に任せていいときと悪いときがる。
以来、ちょっと嫌な患者になったこおろぎなのだ。


結果的にたかが?ジンマシンで2日間で4人の医師の意見を聞いた。
山ほどの情報を集め、こおろぎ自身できるかぎり勉強して考えた。
プレドニンはある意味、万能選手。しかし使い方が難しい。


こちら側にも知識がある限り大丈夫。1日30mgなら問題はない。
そして、飲み始めて2時間後、ちょうどキキが帰ってきていた。


「あ、首の腫れ、引いたよ!」
「唇が楽になった・・」

驚いた。これが薬か・・・。


もちろん魔法のようにすっきりなどしないけれど、
人体実験開始後2時間で変化。脅威である。
医学生キキも仰天。


凄い+怖い。
だが薬とはそういうものだ。


だがただいま土曜日の18時半現在、相変わらずこおろぎは赤い。
かなり腫れは引いたし、顔の赤みは少し消えた。
でもまだまだ外には出られない。
毎食後のプレドニン他の薬で少しずつ少しずつ。
ジンマシン自体も、峠を越えたのだろう。


それにしても、プレドニン、ケンケンも飲んでいた。
獣医さんと相談して、どんどん痩せていくケンケン、転ぶたびに
背骨、腰骨、後ろ足がどんなに痛いだろうか・・・・、痛がらず
もちろん吠えもせず・・のケンケンにどんな薬を飲ませるかが
大問題になった。心臓の薬はむしろ老犬には負担になるかもしれず、
途中でやめた。しかし、痛みその他のために、一粒5mgのプレドニン
朝晩のご飯のときに半分ずつ飲ませた。効果があるかどうか疑問だったが
亡くなるまで半年続けた。


今こおろぎは思っている。ケンケンはお薬が効いて少しは楽だったのではないだろうか。
最後は6kgを切るやせっぽのワンコになったケンケンには5mgのプレドニン
絶対に効果があったと確信できる。私の体重で10mg投与してこの効果だからだ。


今回こんな経験をしたのも、意味あった気がする。


ころおぎは相変わらず赤い。でも元気は元気。
ただ週末の長距離ドライブとお友達のウエディング、古いお友達との再会のすべてをキャンセルしたのは残念。仕方がない。


今、顔の腫れはほとんどひいた。
でも、あら、シワとたるみがもどってきた。
あらあらあら、腫れてたときってシミもたるみのなかったんだわ・・・


今回大慌てしたこおろぎ、なにかどっさりいろんなことを
学んだ気がする。
ハンディキャップはかくもつらい。

こおろぎが診ていただいて診察室を出ると
すでに待合室には大勢の患者さんがいた。

みんないっせいにこおろぎの顔をみて
いっせいに驚いて
いっせいに目を伏せた。


優しさってどうやって表すものなのかしらね。


「思いやる」っていうのは、どういう形なのかしらね。


考えてしまった。


さて、そんなこおろぎさんちには驚愕の美人が今滞在中。
ロッコからの留学生、Zちゃん。。
高校を卒業して日本に来て外語大から北の都の大学の1年生に入学して今大学院。
7年でこんなに日本語は上達するものか。上達なんてものじゃない。
コロ介よりキキより、ママより完璧。今すぐアナウンサーになれそう。
滝川クリステルの代役はすぐに務まる。


なにが驚いたって美しい。
彼女を見てシスターズを見ると同じ人類だとは思えない。
火星人が来て、地球人だと思って彼女たちをいっしょに捕獲したら
火星人たちはきっとシスターズは他の星のイキモノだとおもって捨てるだろーなー。


彼女はラマダンで日没時しか何も食べない。
でもファッションもお化粧も普通の女子大生。
イスラム教徒にも色々いる。

今彼女にいろいろなことを私たちは学んでいる。
ひょんなことから何日かわが家に滞在するだけだけれど
12月からモロッコに行くキキには最高のアドバイザーの登場となった。

コロ介などZちゃんの美しいお顔をあんぐり口をあいてみている。
ながーいまつげが信じられない。どんな付けまつげより長い。
私たちのマスカラのいかにビンボーくさい抵抗か、あらためて思い知った。
どんな化粧も、見本はアラブ系美女なのではないだろうか。


「ねえ、この鼻の高さと、まつげ、何の差?」とコロ介が聞けば
「DNA]とすかさず答えたZちゃん。

彼女はカブトムシのところでDNAを研究中。
諦めるしかないと悟ったコロ介だった。すみません・・・


写真はチェンマイのホテルのキクの装飾。カブトムシ撮影。秋だわね・・