こおろぎの不幸


キキが引っ越して2階の彼女の部屋が空いた。と言ってもキキがここでちゃんとベッドに寝たことは何回あったか。パジャマも着ず、どこででも寝るのがキキの習性。お嬢様ライフとは全く無縁だった。野良キキは野良のまま世に放たれるが、世の中で多くを学んでおくれ・・・。


車の免許をとってすぐ旅支度。三重県の友達のところに遊びに行くのはいいけれど、名古屋までフェリーだという。33時間かけて車も無いのに船で行くという。安ければなんでもいいらしい。かつてこおろぎはパリまで23〜27時間かけて通ったことがある。パキスタン航空とか何とか航空とか、突然寄航する空港がどこだかわからなくて困惑しながらヘトヘトでパリに降りた若い日。貧乏旅行の発想は遺伝か。


家事その他、なかなか片付かず仕事ができないのでとうとう短時間時々お手伝いさんに来てもらうことにした。お掃除専門業者に来ていただいたこともあるが、こおろぎの家の場合、驚異的な量の食器と書類、書籍が家中どこにでも散在しているのでお掃除だけの人では困る。以前引越しの頃、大変有能なお手伝いの方に遭遇したので彼女のような気の利く人がいいな・・・と思って探したが無理だった。
でもあの彼女には大変な欠点があったっけなあ・・。
愛車がムスタングリンカーンだったという生活の風格が消えない。来客が来て応対してくれると誰がどう見ても彼女がご主人で私がお手伝いさんに見えた。休憩してもらうとそのすわり方が優雅。彼女がソファーで私が床に座る形がサマになった。作業着も某ブランド品を上手に着こなし、髪も爪も手入れが行き届いていた。子供たちのお下がり着て、モンチッチ状態のこおろぎはたちうちできなかった。でも見る目があるので食器を任せても事務系の片付けも完璧だったけど・・・。さて今回は、ある紹介で格安のところにお願いしたところ・・・お試しの3時間に来たのが・・・・



あら、あら、あら!なんだか立派。再び立派。
「洗剤がないのはどうしてでしょうか?」
「普段どうやってお掃除していらっしゃるのでしょうか?」
「お病気の方のお宅や妊婦さんなど、本当にお困りの方のお宅にうかがっておりますの」ああ、ああ、ああ・・・ママと私はうなだれるだけ。できないから頼んだのに
誤るばかり。こおろぎは2度も洗剤を買いにでかけた。
それよりなにより、彼女の年齢が問題だった。ママより10歳若い。
つまりこおろぎより20歳上。


「足腰が痛いので限度がございます」
「ハイ、ごもっともです・・・」」
「怪我をしてもなんですのでねえ」
「ハイ、無理なさらずに・・・・」
「何でもさせていただきますが、本と食器は動かせませんね」
「ハイ、私がさせていただきます!」



こおろぎは不幸である。彼女はグラスを一個割ったが、
こおろぎのママは「お怪我はありませんか?」と駆け寄ってしまい、
大事なグラスの弁償など言い出せる状況ではなかった。
こおろぎがやろう。これならこおろぎがやったほうが早い。
情けない・・・。



連載の締め切りが二つ重なる金曜日だった。お掃除騒ぎの中でヘトヘト。
その合間に、コロ介の学校の面談。20代の英語の担任は実に美しく明朗快活で、中学校の教師より女優業のほうが向いているかも。成績の話に到達する前にあれこれ盛り上がってしまい爆笑大騒ぎ。どこに行ってもまじめさが欠けるこおろぎ母娘。後がつかえているのであわてて切り上げる。結局成績のお話は最期の30秒くらい。「このまま頑張ってね!」という激励で終わった。申し訳ない・・・。



こおろぎはあたらしい体操を始めた。先日、猛烈に美しい母娘とお食事をした。
こういう二人をセレブという。美しさと品格と知性を全部持っている。何も問題がない二人なのに、ある体操をしてそれぞれ4キロ無駄な肉を落とし、健康を取り戻したという。同席していたカブトムシもきっと8キロは落ちると断言。こおろぎも苦労なく無駄肉が落ちるかもとのアドバイスで彼女達の愛読のテキストを送ってくださった。
要するに骨盤のゆがみの問題らしい。あら、2日、合計4分でこおろぎはちょっと調子がいい。身も心も仕切りなおし。身辺掃除も仕切りなおし。なんとか革命を起したいもんだわ。

大学の試験が近い。大忙し。
でもこの写真(バエレンタルの中庭)のようにきれいな生活空間をなんとか手にいれよう。キキガ出た2階の部屋にもキッチンがついているのでそこを第二キッチンとしよう。3階のキッチンも第3キッチンとして稼動させよう。やっぱりお手伝いさんが必要かも。生活費すべて節約してでも来てもらおう。ただし、ムスタングも、70代もダメ。
若くて力持ちで、パソコン技能高く、運転免許があって、語学堪能、できれば美人で気立てがよくて・・・ってそんな人、いないかなあ・・・。見つかるまで、こおろぎはコマネズミのように働くしかない。運命だわ・・・、これ。