続 今日のJR


犬も歩けば棒に当たるわけだけど、こおろぎがJRに乗れば何かが起こるってのは実に疲れる。
そんなこんなで函館に着いて、2コマ授業。専業主婦はいかに生まれ、外食産業と女性の社会進出について、大演説しちゃってヘトヘト。なんだかんだで飛び乗ったのが17時台のJR。古い車両だし疲れているので奮発してグリーン車。もうだれかが騒いでも大丈夫・・・と思った私が甘かった。


一人席はすでになく、通路側をゲット。
あっ!座ってびっくり、と、と、となりにはジャイアン・・・。それがまたなんだかしらないけどドキザなジャイアン。ヘトヘトのこおろぎはぐっすり眠ろうと思ったのに、なんだか動きのでっかいジャイアンが気になって寝られない。締め切りの原稿もあるので結局また3時間半仕事をした。それはいいのだけど、長万部すぎたらこのジャイアンが寝た。それがすっごいイビキ。あたしゃ、自分の運命を呪ったわねえ。さっきまで気取ってたくせに、
蛙の殿様みたいなデッカイおなか上にして(あたりまえか・・・)、それはそれは無防備なイビキ。困ったのは、周囲の眼。振り返って見る人もいるし、通りかかっては呆れてる人もいる。あら、私、連れだと思われてたらドーシヨー・・・。確かにこおろぎの家にもジャイアンがいる。このジャイアンもイビキがひどくて、家族一同、毛布かかえて避難することしばしば。だけど、蛙の殿様よりはまだマシ。情けない。車内の皆様に、この蛙のジャイアンは私の連れではありません!そんな目で見ないでください!と言いたい衝動と戦った。情けない。でもその必要もいほど、その後、グリーン車のオッサンたち、どういうわけかシンクロしてイビキ合戦になった。信じられない。通路はさんで隣の3C席のガマガエルは両足靴下脱いで、下品な週刊誌読み終えたらグーグー高いびき。斜め前の2C席のアオガエルは3冊漫画を読んだあとこれまたひどいイビキで。イビキって伝染するのか、感染するのか?ミステリーゾーンのようになった。もちろん後の席でも。ま、おじさんたちみんなお仕事疲れなんでしょう、ゆるしてあげましょ・・・なんて優しいこと言ってられない!グリーン料金4000円、どうしてくれる?筑波山麓の蛙の大合唱になるなんて想像もできなかった。ん、ん、ん・・・・・もーっ!


前世、なにか問題あったのかもね・・・・私。


そうやって這うように帰宅して、今朝は早くから大学。健康診断だった。
バスでバリウム飲むという体験。身長測定でズルして背伸びして叱られた。いいじゃないの、2センチくらい。こんなトシのこおろぎに真実知らせてどうだってのかしら。心の小さい看護師だった。そのあと図書館で資料さがして、立派な教授室で初めてお勉強。見晴らしのよい広い部屋。パートタイム教授にはもったいない。せっかくだから勉強しよう。
すごい論文を4本読んでぐったり。体力使った研究には迫力がある。脱帽。そんな体力も気力もないこおろぎは総説・総論専門か。そんな中、おもしろい報告も発見。大皿盛だと食べた量がわからなくなり、太る傾向があること、日本の古来の盛り付け文化がなくなること等、なるほど。今後教室の展開の参考にしよう。



健康診断の長い待ち時間におもしろい本を読んだ。これもこおろぎ文庫のイチオシに書くことにする。「食べる西洋美術史」。18世紀半ばになるまで、肥満は恥どころか、社会的威信を表すものだったんだってよ。よかったね、ジャイアン・・・。


西洋の食文化を考えるとき、当然宗教の影響ははずせないと思っていたが
宗教よりはるかに影響をもっていたのが階級だったという。
いろいろおもしろかったが、野菜は庶民以下が食べるもので、貴族や上流階級は果物。果物の絵が多いのもそのあたりらしい。

西洋絵画に食の場面を探す作業はずいぶんやったけれど、見方が変わってきた。実におもしろい。


大学の帰り道、甘い香り。みたらピンクのツメ草が一面に咲いていた。
思わず草むらに分け入って写真を撮ってきた。学生たちが呆れてみていた。
植物は美しい。素晴らしい香り。一瞬の夏の香りだ。


バリウムが体の中に居座っていて苦しい。体重は確実に元に戻り始めていたのに、ずっしり重い気分。今、日本テレビでドラマが始まった。水谷豊主演。北海道のお医者さんの話らしい・・と思っていたら、ママがとんできた。「パパの同級生よ!道下さんのお話!」とのこと。北大から道東の霧多布に1年の約束で送られて、ずっとその地で活躍された。パパが元気だったら・・・と思うこおろぎ。今日、大学の先生と終末医療の話題になった。そのとき、こおろぎのパパの話をした。父は入院する前日、松坂牛とウニとアワビと・・・とにかく母に三越で一番いいものを買って来い、と命じて最後の晩餐を演出した。大腸がんなどかなり悪かったはずなのに病院に行かず、ただ一人戦った最後の自宅の夜だった。父はおいしそうにしっかり食べ、翌朝入院。その日から何も食べず2週間で亡くなった。その話をして、広い教授室でこおろぎはうかつにも涙をこぼしてしまった。その夜、父の友達のドラマ。不思議なご縁だ。


こおろぎのパパは、まさかドラ娘が学者になるとは想像もしなかったと思う。もし元気なら、どんなに喜んだかしれない。グリーン車の蛙に腹をたてている場合じゃないかもね・・・。