肉じゃがは誰のものか

madam-cricket2007-03-05

朝から大学。校正の締め切り。千晶ちゃんとの共同作業。もっと早くやっておけばものすごい大論文になっただろうなあ・・・と思うと悔やまれる。だけど、論文なんてものはどこかで区切らないと永遠に書けない。


午後は図書館にこもって資料集め。世の中にはすごい研究がある。頭の隅々まで風が通る感じ。丁寧な、丁寧な仕事をしたい。どっさりコピーして雨の中帰途。
耳が痛い。痛いというより、聞こえ方がやはりおかしい。もう2ヶ月以上不調。病院3箇所回って目下検討中だけど、こりゃ変だわ。近所の耳鼻科に飛び込む。10日ほど前はなんともないと言った先生が「あ、軽い中耳炎!」とうれしそう。ドキッ。生まれて初めての診断。キキは生後まもなくからひどい中耳炎で小学校4年ころまで苦しんだ。外国へ連れて行くときは耳に管を入れての大騒ぎだった。とうとうその苦しみが私に回ってきたか・・・。


猛烈に原始的な方法で耳に空気を入れた。ひえーっ。トイレが詰まったときの、お風呂が詰まったときの、あの騒動と全く同じ物理的作業。全く効果がなかったけど、帰宅したらいつのまにか耳の曇りが晴れた。投薬で様子を見る。来週東京の予定だったけど、さてどうしたものか。



久しぶりの大学でいろんな発見をした。料理のレシピの著作権という記事も見つけた。実に全く、料理の特許というのが問題だといつも思っていた。地方で大活躍しているある料理研究家のことを、「あの人は○○先生のお弟子さんだったのだけど、全く同じレシピを使って教えている」と批判しているのを聞いてぞっとしたことがある。大いに同情した。まるで盗人扱いであった。多くのファンをつかむには彼女の人としての魅力があるに違いない。好き嫌いは別としてうらやましい限りだ。料理など限られた調味料で味をつけるわけで同じになるのは当たり前だ。冷静になれば、素材そのものはけして二つと同じものはない。したがって、調味料の分量が同じでも同じものなどけしてできない。



見つけた新聞記事には私と同じ理由で、料理の特許はむずかしいと結んであった。以前、たった一度だが、料理記事に対して投書が新聞社にきたことがある。私が書いたお菓子のレシピは自分も知っている。したがって荒井三津子はだれかのレシピをそのまま書いたのではないか、それでいいのか、という悪意に満ちたものだった。名前もないのでそのままになったが、大変悲しかった。そのお菓子は学生時代、友人から教えてもらったものを作りやすい分量にしたものだった。彼女はある著名な先生の教室で学んだと言っていた。だがそのレシピにそっくりのレシピを私はいろいろな書物でみたことがある。若干分量が違うが、ほとんど同じだ。所詮お菓子。似て当然。


料理はだれのものなのだろうか。肉じゃがのレシピに特許がありうるか。義母がせっせと書きためたレシピや海外のレシピなどを再現しながら、作り易い、今に合ったものを試作しては考えている。その結果、誰かのなにかと同じになることはありうるだろう。豚の角煮だってすきやきだって全く同じ調味料はどこにでもある。さて肉じゃがは誰のものか。ジャガイモの形、鍋のサイズ、水の量、なにもかも不確定なのが料理。料理に特許はありえない。計量カップの中の調味料の組み合わせは学べるが、料理は調味料単独ではなりたたない。花も同じ。素材が同じでも同じ枝は二つとない。だから生け花は「工芸展」や「芸術展」「日展」などの展覧会の仲間に入れず、独自の「花展」での展覧しかないのだと昔誰かに言われたことがある。一過性のものは芸術として評価されないのだという。さて、芸術とはなにか。肉じゃがに端を発した芸術論、行方は見えない。


耳のせいですっかり病人気分でソファーでテレビを観ていた。辰巳芳子先生の番組。今日一日、「食」に関する論文漬けだったので大いに考えさせられる。
こおろぎの教室のメニュー、ちょっと変わっちゃうかも・・・。


その番組のちょっと前、変わった歩き方の指導で一世を風靡した某氏も別の番組で観た。あっというまの一世風靡で欲しいモノを手にした彼に、なぜ世間は疑問をもたなかったのか、ちょっと憤ったけど、辰巳先生の番組で消沈。丁寧に丁寧に生きればそれでいい、そんな気持ちになった。


NEWS WEEKに「こんなにあるあるニセ科学」という特集があった。
ため息がとまらない。マイナスイオンがもてはやされたとき、そんなもの発生するドライヤーで髪の傷みが直るわけないと言っても、そんなもの塵と埃は集めるかもしれないけど体にいいわけないとこおろぎはアチコチでいったけど誰も耳など傾けなかった。アロマ系の様々なグッズだってアレルギーの報告はあっても「癒し」などという怪しい医学的効果の報告は見たことがない。「いい香り」が「うれしい」「心地よい」のは当然。だがそれと「効果」とは別だ。記事ではモーツアルトを聞かせると赤ん坊の頭がよくなるというのもウソピヨン(これは私の言葉)だと書いていた。ざっまー観なさいよ!三津子さんがナンと言っても、マイナスイオンで病気が治ったと言い張ったオバサン、アロマで癌まで治ったといったオバサンその2、○○で体のゆがみが治ったという不思議なこといってたオッサン・・・と言っても、彼らがNEWS WEEKを読む可能性はないか。せいぜいがくねくねと歩くか、お昼の番組みながらキナコだ、イチゴだ、ゴマだ、味噌だと毎日「体にいい」情報集めて食べ続けるのだわ。


ああ、辰巳先生、こおろぎは考えます。非科学的な世間にたちむかいつつ、地味に丁寧に、肉じゃがを作りましょう・・・。4月からはまた生命科学と食生活論などの授業が始まります。内容も吟味しなおして、しっかり授業してまいります。



今日はお病気気分。耳はまだちょっと変。地獄耳に天使が宿った感じ?
心おだやかに過ごしたいものだわ・・・。