奇跡の冬

madam-cricket2006-12-12

先週の金曜日、旭川に行った。直前まで原稿を書き、撮影をし、ケンケンの世話をしてJRに飛び乗った。中学校のクラス会、といっても気軽に集える10人程度の集まりだと聞いていた。30数年ぶりに会う人もいた。みんな素敵だった。中学3年のときの副担任は21歳の養護教諭の美奈子先生。いつのころからか必ずご一緒くださってるとのこと。7つしか違わない。ずっと親しくしている由美ちゃん以外男子たち。いやあ皆さん、ホントにいい大人になっていた。こおろぎは感激した。本当は夜中までお喋りして旭川在住の由美ちゃんといっしょにホテルで朝までお喋りする予定だったが、前夜から風邪気味の上喘息。声も出ずらいので用心して帰宅。前日のテレビは途中で何度か咳き込み大変だった。旭川滞在3時間だったが、こおろぎ心やさしくなったわ。
2次会は高校の同期生がやっているライブハウス。そこでU君のピアノとS君のベースで突然のジャズ演奏。カッコいい!これが小さい写真。それぞれ仕事しながらほとんどプロ。涙がでそうだったわ。心優しい大人たちに乾杯!
私思ったわ、みんな昔からやさしかった。こおろぎはどうしても校区の学校に行きたくなくて中学受験をした。それなりの事情があったのだ。幸せな中学時代を思い出した。三津子ちゃんまた来てね、と立派なおっさんたちに惜しまれて帰途についた。


その土曜日あたりからケンケン何も食べなくなった。
様子を見ていたら深夜大量にタール便。消化管の出血だと素人判断。日曜日獣医さんに連れて行った。混んでいる。2時間半待った。いつもはみんな可愛いですね、と声をかけてくれるのに、あまりにぐったりしているケンケンをみてみんな声がない。ひそひそ話す人もいる。哀しかった。ケンケンも時々苦しそうにうなる。


やっと順番がきて診察台にのせたがケンケンは動かない。院長の診断も私と同じ。
貧血もある。3本注射。わるい心臓が動いていることのほうが不思議だという。
どんな検査にも耐えられないという。流動食を注射器で無理やり口にいれる方法を練習。ケンケンは微動だにしない。水用の注射器もいただいて帰宅。


タクシーの運転手さんはやさしかった。
「揺れないように運転するからね。うちにも7歳のシュナウザーがいてね、僕にべったりなんですよ。1日おきの仕事なので1日おきにうなだれてるんです・・・。そうか・・・;19歳か・・・。ウチのワンコは僕が死んだらどうするだろうなあ・・」

なぜか言葉につまりながら
「お客さん、大事にしてやってね。えらいね、ワンコもお客さんも。がんばってね、幸せなワンコだよ」
またこおろぎはタクシーで泣くことになった。
でも、あら、行き過ぎたわよ、運転手さん!全く反応のないケンケンかかえて止まらない涙をぬぐいもしないヘロヘロの私なのにそこんとこはしっかり「行きすぎ!道違う!」と叫んだわ。

運転手さんあわててメータ―とめてくれました。胸がつまって道間違えたそう。結局いつもより400円も安く家についた。申し訳ないのでお支払いするといったら「お見舞いですよ。お大事にね、いい顔して寝てるね・・」と言ってまた声をつまらせた。

こおろぎも泣きながら車を降りた。ケンケンは動かない。襟巻きのようにぐったりしている。
今度こそもう無理だと思った。あの大量の黒い便。全く食べないし動かない。
薬も無理。気持ちを立てなおして娘たちにも言い渡そう。ケンケンを静かに見守ろう。


その夜中、小さい声を聞いた。私はこの8ヶ月、ちゃんと布団に寝ていない。ケンケンといっしょにリビングの床とかソファー。ホームレスのような寝方。動かなかったケンケンが呼んでいる。あわてて抱き上げて水を近づけたら自力で飲んだ。四肢が立たないので支えるのが大変。でも水をのんだ。じっと私を見つめている。いただいてきた粉の栄養食をお湯でといて口にはこんだら顔中汚して飲み込んだ。再び奇跡が起こったのだ。

月曜日昼、ケンケンはいつもの餌と流動食をまぜてやったら食べた。食べさせるのは大変。まさか食べないと思ったので仕事用の洋服だったこおろぎはスカートもストッキングもどろどろ。でもいい、千載一遇のチャンス。いいのよいいのよ。バレンチノのスカートなのに・・・。ストッキングもいつもの2足390円ではなく、その日にかぎって2000円の上等なもんだったけど、もうどうでもいい。元気にウンチもした。ウソ・・・。ちゃんとしたウンチなのだ。あの黒いどろどろの大量のウンチはいったいなんだったのだろうか。胃潰瘍か、ポリープでも破れたのか。精神的ストレスかしら。止血剤の注射で一時的に治ったのか。どうであれ、ケンケンは再び食べ始めた。

吠える時間は短く、多くの時間は眠っている。だがケンケンは確実に峠を越えた。これで何度目だろうか。今もこおろぎの隣で、静かな寝息をたてている。この現実はなんだろう。獣医さんも看護婦さんたちも言葉をなくしていたのに。明日つれていったらどんなにおどろくだろう。

院長先生も他の先生もみなさん「ケンケンはすごいなあ」といつもおっしゃる。
なんだかしらないけれど、ケンケンはすごい。彼が生きたいだけ生きてほしい。
生きている限り、私たち家族は多くを学び、優しさをもらうのだ。


11キロだったのに5キロになった。それでもまた3キロくらい復活するかもしれない。
寝たきりでもおしっこを教え、私たちに応えてくれる。ころおぎは泣いていられない。安楽死も考えたけれど、生き抜こうね。奇跡のワンコとすごす冬の1日1日を大切にしていこう。

写真はレストランひらまつの札幌。ルバエレンタル。教室のクリスマスを開くので今日打ち合わせに行ってきた。そこでもマダムは開口一番「ケンケンいかが?」
みんなの気持ちを集める不思議なワンコは、今ぷーっとオナラをした。