madam-cricket2006-11-23

午前3時からケンケンが啼き続けた。よくあること・・・とはいえ第4水曜日は三角山放送局の担当日。疲れていては頭も働かず声もでない・・・。ケンケンのそばでそのまま朝を迎える。洗濯機を回して、大慌てで仕事の準備をして宮の森の獣医さんまでケンケンを連れて行く。預けてそのままタクシーで琴似駅前のレンガ館にある放送局へ。

10時からすぐに本番。どっさり読まなければならない原稿があるのに、ディレクターのEクンとおしゃべり。CMの間に練習すればいいのに、なんとかなりそうで手を抜いた。するとてきめん、NTTドコモからのお知らせも、住宅会社のCMも間違いだらけ。情けない。
どんな場面も決して、絶対に油断してはならない。2時間の番組にもだんだんなれてきたのがわるかった。手も気も抜かないぞ、と大反省。


終わってすぐJRで30分、恵庭へ。13時から大学の授業。食生活論。学生180名相手に食生活の変遷。かつて栗やクルミなどを食べていた人間がどうやって今の食生活を手に入れたか、歴史は不得意の私だが一つ一つ学生とたどる作業は実に楽しい。食の場面はただ餌の供給ではなく、政治を生み、流通から経済の発展を見、非生産者を生んだことから格差社会をスタートさせる。公家と武士が料理に流儀を生んでいつの間にか作法が誕生する。あっというまに90分。ちょっと休んでこんどは施設環境と食空間論。こちらも
病院や学校給食の空間論を模索。終わって千晶ちゃんと論文の打ち合わせを軽く。
JRに飛び乗って札幌にもどり地下鉄で円山。ケンケンを迎えに行く。


「両目に傷があります」
ケンケンの両目に傷・・。
おしっこシートか、タオルか、クッションか。自力で立つのが難しいケンケンは頻繁に派手に転ぶ。何があっても不思議はない。だがすで長くステロイドを飲んでいるので簡単に薬は効かない。注射をしていただいたという。目薬3種類を1時間おきに注すように言われる。ぐったりしたケンケンをうけとったが、その軽さに声もでなかった。
降りしきる雪の中で、先生たちがなんとかタクシーをつかまえてくださり、やっと帰宅。
その車の中で涙が止まらなくなった。ぐったりしているケンケン。

タクシーに乗るとき「ケンケン、よかったね、お母さんが迎えに来たよ」
と獣医さんと看護婦さん。「すっか安心してる顔だね」とケンケンを見送ってくださった。獣医さん二人と看護婦さん二人。チームで診てくださっている。本当にすばらしい応援を得てケンケンは生きている。そして私も生かされている。
暗い外に舞う雪をみながら、クリスマスもお正月もいっしょに迎えようね、パリに行こうとしてごめんね、どこにもいかないからね・・と繰り返すばかりの私だった。
怪我させて本当にかわいそうなことをした。安心してスヤスヤ眠る姿だけでいい。生きたいだけ生きて欲しい。両手でケンケンを抱えているので涙をぬぐえない。12キロあったのに今は7キロ。骨ばったからだが痛々しい。


「どうしたの?」とダミ声の運転手さん。
「いえ、別に」と私。
「犬、病気?」と堀内孝夫が70歳になったようなお顔だちの運転手さん。
「いえ、トシなんです」
「いくつ?」とピンカラ兄弟さんのようにも見える運転手さん。
「高齢です」と私。
「お客さんじゃなくて犬さ、ひゃっひゃっひゃっ」と五木ひろしさんにも見えるシワシワ顔でダミ声の運転手さん。
「?! 19歳」
「それってすっごい年寄りってことかい?」とかなりのジジイでドアホな運転手。
「まあ・・」と憮然とした高齢ではない私。
「ぐったりしてるねえ、、そうとう弱ってるねえ」とETをつぶして煮しめににしたような顔に最悪のガラガラ声の運転手。
「いえ、眠いだけです」なぐりかかりそうな私。
「いやあ、もう充分大往生だねえ」きっと畳の上では死ねない運転手。
「目以外どこも悪くないんです」戦闘モードに入った私。
「ま、生きもんだからねえ・・、寿命ってのがあんのよ、しかたないよ」と地獄へ落ちるに違いない運転手。
「運転手さんももうすぐですよね」と完全に戦闘状態に入った私。
「なにが?」
「電車通りを越えて右!」
「いやあ、生きモノはこれだからこまんのよ」とそのうち強盗乗せる運転手。
「そこを左!あのねえ、うちの犬はただ眠いだけなわけよ、トシとってるけどドッコモ悪くないのねっ!無駄に年取って口の利き方もしらない人間よりいいわけよね!ユーターンしていただけます?!」
「ひゃっひゃっとひゃっ!いるいる、無駄に年取ってる奴!」ドアホドマヌケドおたんこなす!

でもおかげで涙は乾いたわ。


時間は確実に流れている。ケンケンが若返るはずはない。どんなイキモノも死亡率100%。どう生きるか、だけが問題なのだ。

帰宅して安心して眠るケンケンながめながら立ち直るこおろぎ。
できることをする。それだけなのだわ。
バレエからもどった次女相手にワイン飲んで元気取り戻す。ちょっと風邪気味。新渡戸稲造の武士道を読むが日本語わからず。新渡戸は武士道を英語で書いた。したがって翻訳本を読むはめになっているが、この日本語がわからない。かつて古文古典は大得意だった私が、肯定ブンか否定ブンかもわからない。どっさり疲れる。だけど日本の作法の歴史を考えるには武士道通らなきゃね。ケンケンに付き合ってまた徹夜。漢方のんで かなり眠るようになったものの、降る雪ながめならがの夜なべ読書も悪くない。

小さい写真はHTBのロビーの装飾。先日コメンテーターで行ったとき撮った。日本ハムの優勝で沸いたトシだった。HTBのおかげで私もすっかり野球ファンになった。
大きい方の写真は先日の東京。ナチュラルなティータイム。色づかいが楽しい。

今夜のワイン、1090円。東急ストアの東急デーのサービス品。でもパリコンクール金賞受賞のワイン。セリエ デュ フランス。カベルネソーヴィニヨンのワインが好物の私だけどこれはメルロー。でも美味しい。シチューにもどっさり入れた。武士道読みながらメルローのワイン。足元に老犬。税金の督促が来たけど、わるくない人生かも。