madam-cricket2006-10-01


朝晩はすでに秋風。夕べの立川クンの舞台にはベッチンのジャケットにウールのストールで行ったがそれでも寒かった。

亡くなった友達のことを考えているからでもないのだろうが、時間の進み方が遅い。体調もわるい。大掃除が進まない。それでも日常使っている4部屋を同時にかき混ぜる作業を遅いながらもせっせとやっている。

昨日はラビカの立川佳吾クンの芝居があった。FM三角山放送局のスタジオをフルに使った二人芝居。JR琴似駅前の赤レンガの倉庫。この赤レンガ倉庫を舞台に書き下ろしたのだろう。立川クンと女優さん、たった二人の舞台だった。夜9時から。暗い倉庫に照明が生きてすばらしかった。脚本、演出ともによかった。どんな頭の構造なのだろうか。長女ミキコと出かけたのだけれど、私が最年長の客だったと思う。若い学生風ばかり。年寄りこそ、こんな若い人たちの舞台を見るべきなのに。花が好きだからといって花だけ見ていてはいけない。料理が好きだからといって、食べてばかりいてもだめ。一流であれ、新人であれ、どこのものであれ、話題になるモノはなんでも見るべきなのだ。オペラでもバレエでも、紙芝居でも、歌舞伎でも、中学校の合唱コンクールでも、美術館はもちろん、どれほどたくさんの刺激を受けるか、それが厚みになる。


舞台が終わったあと、ミキコと「土間土間」に行った。Mちゃんのご主人の経営。噂はかねがね聞いていたが、聞きしにまさる美味しさとサービス、スピード。大感動。携帯メールのアンケートにせっせと答えたら飲み物、料理、デザートと当たった。遅い時間なのでちょっとワインでも・・と行ったのに結局12時まで母娘で飲むわ食べるわ大騒ぎ。ちょっとワイン・・・が飲み物サービスがあたったりするのでついついビールのジョッキーを軽く2杯。さらにカクテル。体の小さい母娘はともにひどい低血圧で出かける直前までソファーにうずくまっていた。「無理ちゃう?」と話し合うほど不調だったのに、いつのまにか猛烈に元気だった。
「ミツコはいいわね」といい続けた友達の声がまた耳によみがえる。
そう、「ミツコはいい」。
21歳の娘と、演劇を観た帰りにお酒のみながら演劇論を戦わせ、ちょいと男の子の話なんかもしながら、うっかりカアサンも昔の話なんかしちゃって・・・。老犬を次女に預けての深夜のささやかな豪遊。これは確かに幸せだ。十数年前、大慌てで夜逃げした記憶さえある母と娘は、そんなことさえ笑い飛ばせる大人になった。



10月2日から大学は後期スタート。エコール・ド・フルールも20周年のパーティーをやって1年たつ。父の看病に始まり、ケンケンの介護、その他生活のパターンが大きく変わった一年だった。私も体調調整の年だったように思う。夕べの演劇を観て、やっぱりちゃんと生きていこう、と当たり前のことを当たり前に思った。


「彼女」の遺影は和服姿だった。お茶に精通し、お稽古を休まなかった。かつて母娘で心細く暮らしていた頃、私と4歳の長女は彼女に勧められて、小太鼓と鼓のお稽古にちょっと通ったことがある。仕事で続かなかったが、その空間は実に心地よかった。彼女の人生は短かった。だが亡くなる直前の数ヶ月は別として、彼女の人生はやっぱりカッコよかったのだと思う。幸せだったのだと思いたい。日本画を学び、「和」を愛しながら洋服のセンスも抜群だった。その彼女がうらやましいと言った「ミツコの生活」を、当の私が概観できないでいる。もったいなくはないか。人生をしっかり楽しまなければもったいないのではないか。ちゃんと仕事しなければもったいない。そんな気がしてきた。


さ、10月。なくしかけていた気力を取り戻そう。
明日はゴミの日。山ほどのゴミを出す。リサイクルショップへもダンボール3箱発送する。
食器も整理し始めた。本当に好きなものだけに囲まれよう。実にむずかしいけれど身辺をスリムに・・・、って、これは至難の業。どっさり捨てることにしたのに、出張の多かった亡父の洗面道具のバッグと義母が最後に使っていた化粧品をまた丁寧につつんで箪笥にしまいこんだ。父と旅したときに着たカジュアルなスーツも、どうしても手離せない。義母が縫った子供達の洋服も、義母が使い込んだ古いグッチのバッグ類も処分できない。身辺のスリム化は大問題。私は太らないけれど、モノが増える。うまくいかないわ・・・。


亀のタットが寒くなってあまり食べなくなった。私が世話しなければならないのはケンケンだけではない。クサガメのタッチャンが食べたとか食べないとか、スウエ―デンアイビーが枯れそうだとか元気だとか、庭の紫式部をどこに植えるかとか、「ミツコさーん」と母が呼ぶ。「おかあちゃまあ!」「かーまっ!」と大声で娘たちも呼ぶ。「先生!」と周囲も呼んでくれる。倒れちゃいられない。体調をしっかり管理して予定通り127歳までしぶとく生きることにする。10月。こおろぎの季節である。こおろぎの仕切り直し、ただいま準備中。