うれしい私


 岩城宏之氏が亡くなった。追悼番組でその指揮者は言っていた。「だれよりも僕がうれしいんですよ」。「誰にもわからない失敗をして今でもひとりでぞっとすることがある」。続けて氏曰く、「自分を出さず、楽譜に忠実に音楽をやりたい。それでも出てくる自分があるのはしかたがない・・・。」「自分を出したいと思うのは邪道だ」。

うなずいたこおろぎ。大学の講義など毎年同じなのだから年々楽になっていいはずだ。だが年々しんどくなる。同じことができないからだ。だけどそれは「私がうれしい」からなのだと先日思ったのよ。違った資料で、違った方向で同じことを教えることが楽しい。花に関しても最近思っていた。「作者ー自分の個性」を出そうと力の入った作品には魅力がない。「花」に忠実な「花」が一番美しいと思い至った。花が「場」を得て、そこにとけ込む瞬間がある。そのときが美しい。

「どこに飾りますか」という質問を一番先にするようにしている。「型」を学ぶことにこだわりすぎると場も空気もよめなくなる。そしてその反動で「「自由演技」になったとき「個性」を出そうと力が入る。「花の声」に耳を傾けることだ。

金曜日から広島東京と回った。ケンケンは家族総出で世話をしてくれた。今週、もうすぐモンペリエに発つカブトムシも、こおろぎの授業のために函館から札幌に来てケンケンを看てくれた。カブトもかなり多忙。7月初旬までフランスはモンペリエ、9月は今話題のクロアチア。遊んでいる人など私のまわりにはいないわね・・・。その多忙な中でなんとか寸暇見つけて心休めるわけです。今日日曜日東京からもどった私はカブトといっしょに医大の学祭に行った。お散歩範囲。ことしは後輩におでん屋を任せてちょっと楽な長女。彼女の大学での顔も見て安心。もとより学生が好きなカブトはミキコとお友達群を見つけて笑顔笑顔。今噂のシンドラーのエレベーターも見てきた。つかの間の気分転換だった。ほどなく函館にもどったカブトは今夜からモンペリエでの発表原稿書きに追われるはず。ま、なんであれフランスの風に吹かれるのだから辛くて当然。

広島も東京も私の生徒さんは猛烈に力をつけている。今回は札幌から120本のバラをかついでいった。重くて泣きそうだったけれど、これも「私がうれしい」から仕方がない。以前300本運んだことがあるので、120本で弱音はいてはだめ。今回の写真は東京のみのりちゃんの作品。鏡に映って美しい。「場」にとけるということはこういうことだ。

昨日東京は恵比寿の授業のあと、すぐ近くのいとこの皮膚科でまた肌の勉強。なかなかおもしろい研究をしている。イオン導入器を開発したあたりからいろいろ評価されているらしく、チェジウのコラーゲンドリンクのCMにも登場したり、テレビショッピングにかりだされたりして、顰蹙かいながらも彼の歩き方をしているようだ。強力な育毛剤を開発したらしく、来年は某社から発売になる。論文を見せてもらったがナカナカのものだ。

その彼と夜は代官山で深町純の即興ライブに行った。久しぶりのジャズライブ。若い日ファンだった深町氏のピアノ演奏はよかったのだけれど、そこは従弟もジャズピアノを弾き、私も大学時代ジャズピアノ修行をしたわがままな耳は「ちょっと冒険がない」と結論。休憩時間に抜け出す。御代は見てのお帰り・・・方式。途中で抜けたものの、久しぶりのライブは新鮮。代官山だけに外人も多くて空気が新鮮。かつて寺山修司は「書を捨てよ町へ出よ」と言った。そのとおりである。
一歩でも二歩でも外へ出るべきなのだ。誰にでもいい。近所のお豆腐屋さんでもいい、話をすれば「体内空気」が変わる。「書を持って街へ出よ」が私の格言。

「他人を見下す若者たち」速水敏彦著 講談社現代新書を読む。「自分以外はバカ」の時代か?
今日の函館新聞の連載にも書いたが、私は現代の若者を批判するのを止めようと思う。なによりその若者を育てた親と教育環境を省みたい。言わせてもらえば団塊の世代が悪い。若者世代の何を批判できるだろうか。知らないものは知らないのだ。朝ごはんをつくらない親がいて、その子供の学力が低いという結果もでたと週刊誌で読んだ。朝ごはんを作らない親は誰に育てられたのか。本書に「ネクラが否定されポジティブ思考が声高に叫ばれてきた」という一文があった。ドキッである。なんとなくドキッとしたのはなぜかしら・・・。まだ夜は少し喘息が出て苦しいこともあるが元気回復。考えるこおろぎは完全に復活した。

ケンケンは2泊3日で留守をした私にちょっとヨソヨソしいものの、そしてちょっと痩せてしまったけれどよく食べてよく眠る。足元はあやしいけれど平和にすごしている。夢を見ては四肢を動かす。野山を駆けている夢かしら・・と思うと、切なくなるけれどケンケン、いい時間をいっしょにすごそうね・・・。思い切り家族全員の手と時間をわがものにしているケンケンだけれど、ピアノだバレエだ試験だと忙しい次女もいやな顔をせずケンケンの世話をしている。「おい、長生きしろよ」とさっきも話しかけていた。14歳のマキコにとっては19歳になるケンケンは兄のような弟のような不思議な存在なのだ。いろんなことを教えてくれるケンケンに感謝。

東京教室の利奈ちゃんのご主人は建築家なのに趣味のラベンダー栽培がプロの領域になり、豪邸のガーデニングもいまや全国に知れている。このホームページともリンクしているのでファンも多いはず。その美人の利奈ちゃんとご主人とお庭が25日朝8時半NHKに登場。ぜひご覧ください。エコール・ド・フルールには美人しか在籍できないことをご確認ください。

ページの管理人みのりちゃんが忙しくてお気の毒だけれどせっせとまた日記書きます。こおろぎはやっぱり戦ってこそのこおろぎ。今は時間をいかに作るかが大問題。知恵と体をつかってお勉強します・・・。