学業再開

 滞納していた学会費を払うことにした。目の前の作業に追われて自分の学問など後回しになっていた。だけど頭に雲がかかった感じでずっとすっきりしなかった理由はお勉強していなかったからだと気がついた。

 全く、イイトシをしていつまでお勉強お勉強と言うのかしら。子供のお勉強ではない。自分のだから始末が悪い。私のような理系と文系の両方の学校を出てしまい、こんな仕事をしていると入る学会がみつからない。今は日本生活学会と生活文化史学会、ヒトと動物の関係学会というおもしろいものもあるが、なんだかなあ、書く論文の方向性が見えずつらい日々。しかし世の中は動いているので作業開始。頭の整理をすることにした。

 愛犬、健犬(ケンケン)は18歳の秋、快調にすごしているものの、時に夜通し吠え続けることがある。夜通し歩きまわることもあり、こおろぎは赤ん坊と痴呆老人を同時に抱えているような暮しなのだ。ケンケンにあわせて暮している。かつてこんなに私を振りまわした男はいなかったわ・・・・。このわがままな私がケンケンの言いなり。自己中心も限度があろうと自分でも思うほど勝手に生きてるくせに、そしてこのところは筆がすすまず機嫌が悪いのにケンケンには「ケンちゃあ〜ン」とネコなで声。自分でも気持わるいんだから、ホント。「よくそんな声でるわねえ」とキッズはあきれる。が、しかし、ケンケンはほとんど神様状態の御老犬なので大切にしなくちゃね。幸いケンケンは猛烈に美形。岸恵子に似てるの。ちょっとへップバーンにも似てるかしら。いずれ女性顔なのよ。やっぱり犬でも顔は命よ。この老体で目は半開きでよだれはダラリ、眉間にシワよせたやぶ睨み、その上歯もガタガタなんていうなんていうお顔立ちだったらちょっと私の愛にも限界あるかもなあ。ケンケンはジッとすわってたら全く小犬状態なんだから。特別な遺伝子もってると思うのよ・・・。獣医学部の某先生にクローン作ってほしいと持ちかけてるのだけれど小心者はイエスと言えないらしいわ。せめて精子保存してもらおうかと思っているけれど、どんな雌が産むかで変わるしなあ・・・。そもそもケンケンはお母さんとうりふたつだったけど、可哀相にお父様のお顔を知らないワンコなわけよ。どっさり生まれた兄弟はみんなケンケンと全く違う真っ白い長い毛のワンコだったの。つまり、ケンケンの遺伝子からはケンケンと同じワンコが生まれる可能性は猛烈に低いってことね・・・。そう、命は一代。ケンケンはケンケンだけってことよ。そう、だれもかれもたった一つの命ってことよね・・・。

 とにかく夕べもほとんど寝ていない。夜通しつらそうだった。どこか具合がわるかったと思う。どっしり重く、食欲充分、歩行もなんとかできるものの、排便がつらいらしく毎日私ケンケンのウンチと朝晩闘っている。立ちあがれないので助けてやらなければならない。犬一匹でこれだけ時間を取られるとは思わなかった。高齢犬の問題は今後どんどん出てくるわね、きっと。もの言わぬペットの老いを直視しながら、我姿、我未来の姿を見つめている昨今。だから・・・やっぱり・・・せっせとお勉強するわけよ。ただ何時間も10キロののケンケンを抱えていなければならない夜はパソコンも読書もままならずつらいわ・・・。

 ケンケンが眠っている今こそお勉強の時!寸暇こそ集中力の発揮ドキ。そうね、たっぷり時間があったらいいってももんじゃないわ!そう、どんなにパソコン上手に使えたってオリジナリティーなけりゃ何にも書けないのよ!情報だけあってもまとめる力は別モン。老体に鞭打ってこおろぎ、秋の夜長鳴き続けます・・・・。