パーティー物語Ⅱ

 夢のようなパーティーが終って10日たった朝、大分県九重町から玄関がびっしりになるほどのカスミ草が届いた。贈り主はかの地のまきちゃんという若い女性。2年ほど前、ある資格試験の受験に神戸に行った私はその会場で大分から来ていた彼女と隣り同士になった。言ってみればそれだけなのだが、人間、袖が触れてもそれっきり、という関係が多いのに、袖が触れたが縁で人生長くお付き合い・・・ということも実際ある。こおろぎの周りの人たちはほんのちょっとこおろぎの触覚に触れてしまったために逃げることができなくなって巻き込まれた人ばかりなのだ。お気の毒様・・・。


 このまきちゃんも同じ。1日中講義をうけて夕方試験というハードなスケジュールの中での短い会話だったが彼女の人柄がよくわかった。メールのやりとりが始まり大分の九重町の花農家と親しいとのことでお世話いただくことが何度かあった。しばらく御無沙汰していたが、今回御案内したところ早々にお返事がきた。が、お仕事で出席は無理。大分はちょっと遠いわね。でも最高のカスミ草が咲くのを待って送ってくださった。グランドピアノが隠れるほどの量なのだ。九重町といえば多くの災害に見舞われ、今年のお花は大変な打撃を受けた。そんな中見事な咲きっぷり。カスミ草といっても何種類もある。中指の爪くらいあるような大粒のものもある。まきちゃんの気持に感謝


 前回 パーティーはパーティーを調教する「」で決るということを書いた。実際そうなのだ。“どこで買うか”ではなく“誰から買うか”なのだ。指名される人材をどれほど抱えるかが接客業の成功の秘訣であることはいうまでもない。若いころ札幌から東京まで日本料理を習いに通ったことがある。S島先生のお教室は目白の料亭で展開するゴージャスなクラスと御自宅でのクラスがあった。両方拝見したが、御自宅の狭さは驚くもほどだった。だが全国から集まったファンで歩くところもない。だが狭いからこそお弟子さんの手元は間近で拝見できた。本の撮影もその傍らでなさっていた。なにかと不自由だったが誰一人文句などいう人はいなかった。場所は問題ではなかったのだ。

 仕事をしたい人はどっさりいるのに人材がいないとよく聞く。まったくその通りだ。以前多くのリクエストで打診したレストランがあった。おしゃれな店でお料理の評判も悪くなかったが、支配人がどうにもイヤなヤツで始めからギクシャクしていた。途中からタメグチの対応になり、格式だの重厚だの品格だのという割りには軽い支配人だと思っていたら、案の定ある日電話があった。「そんな価格ではできない」という。老舗百貨店の協賛もあったパーティーなのに彼いわく「どこのウマのホネかわからない学校ですし」とのこと。信じられないでしょ。ウマのホネか・・・・。久しぶりに泣きましたわ、悔しくてね。

 百貨店もあきれてましたがしかし、偉くなっちゃってたんでしょ、そのお店。だがしかし悪は必ず滅びる。こおろぎのタタリでほどなくしてその店はなくなりました。名前を変えてどこかにはびこっているという噂もあるけれど、彼は必ず地の果てに落ちますから・・・・。人間絶対に裏は隠せない。お里はばれる。調子のいい営業スマイルにダマされてはいけない。その場所のムードにダマされてもいけない。最後まで責任をとってくれる担当者との出会いこそ大切。お客が帰ったあとで「うるせえなあ・・・・」とか「いいかげんにしろっつ〜の!」とか「予算もないのにわがままいうなよな!」と影で言う担当者もどっさりいる。いや9割8分はそうだと思ったほうがいい。裏も知っているこおろぎはすぐにそんな人材が見ぬける。営業スマイルが上手なほど裏とのギャップは大きい。いい担当者かどうかは本来の業務以外の話題の時見ぬけるのよ・・・。マニュアル以外、想定外の話題に必ず人柄がでるのよ・・・。

 さて今回担当のムッシュSだが、彼は針1本の隙間も見せない。アホなこおろぎのおしゃべりをあきれた顔して聞きながら5分に1度ちょいと笑顔を見せるクールさ。エスカレートするこおろぎの要望や話題のずれに直面すると「お忙しいでしょうからお話をもとにもどしましょう」とたしなめる。散漫な話題になると「お話を整理しましょうか」と来る。無駄グチは一切ない。ムッシュ、なかなかやるわ・・・。いちいち私の話につきあって相槌うっていたら仕事など進まない。このパーティーもなかったと思う。冷静沈着が1番。髪の乱れも態度の乱れも歩く姿も乱れないムッシュだが、パーティー当日アシスタントが大きな荷物の運搬を手伝ってもらった時、小さな声で「マジカよ・・・」と言ったとか言わなかったとか。いやあ人間的でいいおはなしだわ。


 プレゼントのカスミ草に話をもどしましょ。今回、こおろぎは沢山のプレゼントを頂戴した。おとなになってからのプレゼントは嬉しい。そんな中にサプライズプレゼントがあった。次回はそのお話を・・・・。涙涙だったのよ・・・・。