こおろぎの引越し

 6年間住んだ函館の古い家からカブトムシは五稜郭公園を見下ろすちょいと洒落たマンションに引っ越した。彼の荷物は机とベッドとデッカイ洋服だけで、書物やパソコン関係はすべて大学だから4LDKは十分過ぎるほど広いはずだったけれど、嗚呼可哀相。カブトは食器棚をなんと5つ、螺鈿細工の桐の箪笥3棹とそれとは別に洋服ダンスと整理棚とドレッサー、これも桐の3点セット、何とか塗りの赤と黒の三面鏡、北欧から取り寄せてその後何度も漆をぬったというドデカイテーブル、秋田杉の細工物の屏風と竹の屏風・・・あらら、これってお嫁さん2人分以上の家財道具でしょ、これを全部抱えての引越しとなった。すべて彼の母親の残したものなのよ。普通どこかの段階で処分されてもよいものなのでしょうけど・・・元辻クッキング札幌校校長、デザインクッキング料理研究所代表であり、行儀研究家、和服研究家でありかつ「美しく老いる会」の代表でもあった個性的で美しく、迫力満点の母の念は強かったってことでしょ。なんとしても捨てられない。何度も何度も何度も何度も義父もカブトも私も一つでも処分しようと試みたのになぜかできなかった。やっとの思いで広島で処分を決意したのにいつのまにか引越し屋さんが積んでしまっていたり、気持が弱くなってついついまた磨いてしまったり・・。これってやっぱり「念」かもね。強い強い母の思いかもよ、、カブトのママの。それに私が嫁しながら増やしたのが真っ赤なソファー3人用と2人用、小さいとは言えさらに食器棚3つ、ピアノ1台(本当は3台あるのだけれどカブトが担当するのは猫足のビューティフルなもの)。お気の毒。広いはずの4LDKはびっちり。なんでも捨てろ捨てろの時代なのにさながら彼のマンションは「荒井恵美子記念館」状態。是非1度お訪ねください。入館料はビールかワインで。


 そして函館の古い古い家に残ったのは私の本と衣裳、マキコの部屋全部。いやあこれが想像以上のもの。こおろぎは何が不得意といって片付けるの能力が皆無。というかめちゃくちゃでもなんとか仕事ができるため散らかっていても苦しくない。がしかしなんとしても売らなければカブトのマンションのお家賃が払えないのでカブトの引越しの1週間後2度目のお引越しをしたのでした。その荷物が今日札幌の家に届いたのですうっ・・・うっ、うっ、うっ・・・。けして狭くないはずの家だったのに・・・。家に入りきらない洋服のハンガースタンドが3台ガレージにあるので近々ガレージセールですかって・・。そうか、それもいいか。もうことばが続きません。あまりの荷物。あまりの本。函館に大小8つの食器棚と押し入れびっしり+バルコニーにも食器が溢れているのに札幌には札幌で食器と本。片付けるのに8年はかかります。誰か助けてください。涙がでてきましたからもう書けません。歩くところもないのです。お金がないのにお金持ち見えちゃうらしい理由はきっとこの予期せず意図せず集まってしまうグッズの山のせいです。


 世の中はもう夏休みという大学もあるのにこおろぎはこの引越し騒ぎのなか、4日間函館短大で集中講義でした。で明日からは毎日大学などで授業。10日の試験までなにかとつまっています。こおろぎに愛の手を。涙でにじんで画面が見えません。前世はやっぱりヤドカリでした。その前はカタツムリでした。大きな荷物を背負って生きる運命もこれで3度目です。ごめんなさい。今度生まれてくるときは身軽なとんぼにしてください。